長引く戦火が世界の人々の生活に与えうる悪影響 食糧、エネルギーだけでなく産業構造転換も

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世界中で国防費が増強されるということは、産業構造の大きな転換が図られる。いわゆる「戦時経済体制」が敷かれ、武器輸出が産業の花形になっていく。日本にとっては、不得意な分野だ。

ちなみに2020年現在の武器輸出国ランキングを見ると次のようになっている(世界銀行、World Bank)。

1.アメリカ…… 93億7200万ドル
2.ロシア…… 32億300万ドル、
3.フランス…… 19億9500万ドル
4.ドイツ…… 12億3200万ドル.
5.スペイン…… 12億100万ドル

今回のウクライナ侵攻によって、ロシアの武器輸出は西側から制限を受けることになるはずだ。インドや中国の出方にもよるが、このままロシア製の武器を購入し続けることは難しいかもしれない。

ちなみに、各国政府の国防費が増額されれば、その他のインフラ整備や社会保障関連の予算が削減されることになり、ある意味で国民の生活は停滞することになるかもしれない。今回の戦争の影響がどの程度のものになるのか、IMFなどによる具体的な発表はまだないが、その影響は決して小さくないはずだ。

最終的にはインフレそれとも株価暴落?

いずれにしても、今回の戦争によって、今後、世界に起きそうな大きな変化がいくつかある。簡単に明記すると、次のようになる。

① 各国に食糧とエネルギーの国産化が求められる

食糧やエネルギーといった国家の維持に欠かせないものの国内生産が求められる。日本が最も弱点とする部分だ。

②グローバル化の終焉

世界の二極化が進んだときには、これまでのようなグローバル化は意味を持たない。自国や同盟国との間で、どれだけ自給自足ができるかが焦点になる。

③国防関連の技術革新競争が始まる

ロシアの非近代的な武器がウクライナ軍によって押し返されている現実は、これからの戦争は通信衛星やSNSといったITが不可欠であることを物語った。世界中が武器のデジタル化に進むことになる。

④最も懸念すべきは「インフレ」か?

戦争直後に世界経済を襲う確率が最も高い経済的な変化は「インフレ」だと言われる。太平洋戦争中も、世界中をインフレが襲いかかった。その反面で、株式市場は開設され続け、大きな暴落はなかった。世界の時価総額の半分を占めるニューヨーク市場も、インフレ=金利上昇の影響を受けるが、大暴落に陥るような状況は低いとされる。

世界が二極化されるのか、それともアメリカを頂点とする西側陣営に収斂されるのか。そのカギを握るのが中国とインド。今回のウクライナ侵攻は未来の世界の命運を決める大きなターニングポイントになるのかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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