長引く戦火が世界の人々の生活に与えうる悪影響 食糧、エネルギーだけでなく産業構造転換も

✎ 1〜 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 56 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

西側諸国の多くは、今後なんとかエネルギー価格を抑えて、備蓄増強を図る「時間稼ぎ」を余儀なくされる。もっとも、ロシアも中国やインドといった諸国を「安価な原油や天然ガスで自分の陣営に引き込もう」と躍起になっている。中国やインドは、原油や天然ガスを破格の価格で買い叩くはずだ。

ほとんどの武器をロシアに頼っていたインドは、安価なエネルギー価格を提示されてロシア側に組み込まれる可能性が低くない。しかも、ロシアはルーブルとインドルピーで決済するような仕組みの構築も視野に入れている。エネルギーの取引を通じて、基軸通貨の米ドルを何とか崩していこうという意図が見え隠れする。

記録的な原油高になれば日本経済にもダメージ深刻

原油価格は、今後も値上がりすることは避けられないだろう。1バレル=150〜200ドル台まで達する可能性があるという観測も報道されている。もしもその水準まで原油価格が上がってしまうと、日本のようなエネルギーをほとんど海外に依存している国にとっては、極めて深刻な事態になる。

③ ロシア国債のデフォルトで世界の金融システム危機?

ロシアに対する経済制裁は、第2次世界大戦以降初めて徹底した形で行われているといっていいだろう。4月4日には、アメリカの商務省がロシアによる大量虐殺への追加制裁として、国内でのロシア国債のドル払いを認めない方針を打ち出している。

いわゆる、「デフォルト(債務不履行)」が予想されるわけだが、そうなればロシアは金融市場での信用を失い、国や企業がドルやユーロでの資金調達が難しくなる。さらに、ロシアに融資していた他国の金融機関や投資家も資金が戻らず窮地に立たされる。最も大きな影響を受けるのはやはり欧州の銀行になるだろう。オーストリアの「ライファイゼン・バンク・インターナショナル」、フランスの「ソシエテ・ジェネラル」といった欧州の大手銀行は、莫大なエクスポージャー(リスク資産の残高)を抱えており、ロシア国債がデフォルトすれば、銀行経営の基盤をも揺るがす事態になるかもしれない。

アメリカの「シティグループ」も、ロシア企業や個人への融資保有証券等の残高が総額で54億ドルあり、さらに中央銀行への預金や別の金融契約等を合計すると100億ドル(約1兆2000億円)に達すると発表している(日本経済新聞、3月1日)。

もっとも、この金額はシティ全体のわずか1%にも満たない。もともとアメリカや欧州の銀行は2014年のクリミア併合に際して、クリミア共和国やロシアに対する資産凍結などの経済制裁があったために、ロシア向けの与信残高を抑えてきた。それでも、ロシアがウクライナに侵攻したのと同時に、ライファイゼン・バンクやイタリアのウニクレディトの株価は半分近くにまで下落している。

次ページ世界経済や金融システムへの影響は?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事