ただ、ロシアは名目GDPでは世界全体の「1.8%(2021年、IMF)」と、世界全体の経済に与える影響力は限定的とみられる。人口は1億4300万人もいるが、世界有数の資源国でありながら、国防支出などが大きくロシア国民は貧しい生活を強いられている。いずれにしても、金融システムへの影響はかなり限定的と言っていいだろう。
そこで、注目されてくるのが中国やインドの存在だ。ロシアは格安の原油をちらつかせながら、エネルギー供給の代わりに、インドルピーや中国人民元を使って外貨収入を得ようとする。ロシアへの武器の供与といった部分では中国もインドも手は出せないが、貿易に関していえば、欧州はいまだにロシアから原油や天然ガスを買っているように問題はなさそうだ。
金融システムの多様化が事実上の“抜け道”に?
問題は、ロシアがルーブルを中国人民元やインドルピーと交換することで外貨を取り入れる新しい仕組みを構築しようとしていることだ。実際に、ロシアには金融に関連する“抜け道”が数多くある。たとえば、マスターカードやビザカードは、ロシアから撤退したもののロシア国内の決済機能は単独に構築されていたためにクレジットカードは今もロシア国内で機能している。
IT技術やフィンテックの定着で、金融システム全体の多様化が進んでおり、SWIFTなどの制裁だけではロシア経済を追い詰めることができそうもない。2014年のクリミア併合に伴う経済制裁が長引いたため、ロシアには西側に頼らずに経済の自律化を推進してきた成果といえるかもしれない。
最終的には軍事的にロシアを封じ込める以外にはないのだが、核兵器を保有するロシアを食い止めることは難しそうだ。最悪、ロシアの北朝鮮化が懸念される。
今回のウクライナ侵攻で急激にクローズアップされたのが、世界全体の国防費の増大だ。ドイツは、ウクライナ侵攻直後にGDPの2%超を国防費に充てると宣言し、アメリカも2023会計年度(2022年10月~2023年9月)で過去最大の5兆7900億ドルの国防費を予算に上げると表明した。
日本はどうか。根室と北方領土との距離はわずか「3.7㎞」しかない。しかも、ロシアは北方領土に近年、各種のミサイルや高性能のレーダーを配備するなど、防衛システムを整備している。加えて、1000人単位の軍隊が常駐していると言われている。そんな状況では、日本も含めて国防費を増強せざるをえないことは目に見えている。
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