ウクライナはトウモロコシの主要な生産国でもあり、世界シェアの16.4%(USAD推測値、2021/22年度)を輸出している。中国は2021年1~11月にウクライナから27%(中国貿易統計、農林水産省ホームページより)を輸入しており、アメリカからは72%(同)も輸入している。トウモロコシは豚の餌となる飼料には不可欠だ。また、中国は中華料理でもよく使われる「ひまわり油」もウクライナに大きく依存している。戦争が長期化すれば、中国は穀物不足に陥ることになる。中国がロシアを一概には応援できない背景にもなっている。
中国は世界の小麦在庫の5割を確保している!
これが「穀物の在庫量」になるとやや事情が異なってくる。国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、穀物の世界の在庫利用比率(年間の生産量に対する在庫の比率)は、2021年末時点で29%になる見通しだとしている。
ウォールストリートジャーナル(3月25日配信)によると、USDAの推定では、中国は世界の小麦備蓄の半分を保有しており、とうもろこしも約7割の在庫を持っている。記録的な豊作が続いたインドも、世界の小麦備蓄の約1割を握っている。
約14億人の人口を抱える中国は、過去数年にわたって食料備蓄を優先課題としてきた、と同紙は指摘している。インドや中国が、ロシアの経済制裁に全面的に応じていないのも、この地域の穀物を数多く輸入しているからに他ならない。
ロシア、ウクライナといった黒海地域からの穀物に依存している北アフリカ諸国は世界の小麦備蓄の約5%を保有するのみだ。穀物価格の上昇は、外貨を持たない国にとっては死活問題と言っていいだろう。
食糧と並んで、今回の戦争で懸念されているのが、エネルギー問題だ。プーチン大統領は、「非友好国」に指定した国への天然ガス輸出について、ロシアの通貨であるルーブルでの支払いを要求し、応じなければその供給をストップすると脅しをかけた。
とりわけ厳しいのは、ドイツやイタリアといったLNG(液化天然ガス)のロシア依存の高い国だろう。すでに、欧州連合(EU)は2023年のロシア産天然ガスの輸入量を3分の1に削減する計画を打ち出しているが、その量は約500億立方メートルになる。
問題はその追加輸入先なのだが、実はイギリスの石油大手シェルによれば、世界のLNGの市場規模は、約5300億立方メートル。そのうちの約31%が、単発で取引される「スポット市場」で取引されている。言い換えれば、価格は高いもののスポット市場なら、500億立方メートルの輸入が可能になる(ウォールストリートジャーナル、3月28日配信)。
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