日本と同様ウクライナ支持を早々と表明したフランス政府は、積極的にウクライナ人の受け入れを始めた。現地紙オピニオンによると3月30日時点ですでに4万5000人がフランスに到着している。
カレーにおいては、イギリス政府がビザを持たない人の入国を当初認めなかったため、渡英を希望する数百人のウクライナ人が立ち往生する事態が発生した。2021年時点でイギリスにはウクライナ国籍を持つ人がおよそ4万人在住しているとされ、これらの人々の多くが家族との合流を希望している。
フランス世論がウクライナ支持で沸き返る中、カレー市市長のナターシャ・ブシャール氏はこのような状況の中、84室を擁する市内の宿泊施設をウクライナ人向けに開放し食事付きで受け入れた。月末には市長自らがそのうち8人を市役所に招待し、記者を招いて写真撮影をしている。
イギリス政府がウクライナ人の入国条件を緩和し、フランス当局もカレーへの人の集中を避けるためリールなどフランス北部の他都市へと人を誘導したため、現在(3月29日時点)この施設に滞在している人の数はかなり減っており、ロビーも閑散としていた。
その施設の入り口にいた、ウクライナ西部テルノーピリ出身のオレクサンドラさん(31歳)に話を聞くことができた。3月24日にカレーに着いたという彼女は、4歳の娘とともにイギリス在住の兄弟と合流するためビザが下りるのを待っているという。
「フランスではみなさんがとても親切にしてくれて、生きるのに必要なものはすべて与えてくれました」と落ち着いた表情で語っていた。
地元と支援団体の軋轢
この迅速かつ人道的なウクライナ人の受け入れに対し、賛同を表しつつもやりきれない思いを抱えているのが現地の支援団体と、移民キャンプでの生活を強いられているウクライナ以外の国籍の外国人である。彼らの受け入れを巡り、カレーではずっと支援団体と「ジャングル」の再来を避けたい地元警察および市は緊張状態にあるのだ。
2016年よりキリスト教系の団体、Secours Catholique(カトリックの救済)で支援に関わる73歳のフィリップ・デメステール神父によれば、支援団体は市や警察の執拗な監視や妨害行為の対象であり、制約を強いられながら人道活動を行っているという。
「去年の冬に、15人ほどを収容できる宿泊施設を作ったのだが、警察がきて、結局そこは閉めざるをえなかった。火災報知器に問題があるというんだよ。ホームレスになっている外国人の安全は見過ごすのにね」と神父は語る。
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