「サッカー人気停滞」W杯出場でも楽観できぬ事情 協会収支逼迫、放映権、選手固定傾向などの懸念も

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彼らが直面する課題は、ピッチ内だけではない。長引くコロナ禍で日本サッカー協会の財政面が逼迫しているのも大きな懸念材料だ。同協会は今月27日に2021年度(1月1日~12月31日)決算を発表。収入は約180億円、支出が約197億円で、約17億5000万円の赤字を計上した。この先のコロナの動向は不透明で、2021年度以降も大幅赤字が続くという見通しもある模様だ。

そこで彼らは今月、2002年の日韓W杯の収益など約60億円で購入した東京都文京区の「JFAハウス」を三井不動産レジデンシャルに100億円以上の金額で売却することを正式決定。1年以内に代表強化拠点である千葉・幕張の高円宮記念JFA夢フィールドからアクセスのいい都内のエリアに転居するという。

地上波放映なしが与える長期的影響

こうして財政立て直しを図る考えだが、コロナ禍で一度離れた代表ファンがすぐにスタジアムに戻ってくるとは限らない。今月21日にまん延防止等重点措置が解除されたJリーグクラブも観客をいかに取り戻すかで四苦八苦している。鹿島アントラーズの小泉文明社長も「2011年3月の東日本大震災のときもダメージを受けたんですが、観客動員がその前の水準に戻るまでに4~5年かかった」と話していて、代表戦も同様の状況と見られる。

協会サイドとしては、今回のカタールW杯出場決定で機運を高めたいところだったが、冒頭のオーストラリア戦が地上波放映なしという異例の事態が起きた。最終予選放映権の異常な高騰によって、日本のテレビ局には手が出せなくなったからだ。

その結果、DAZN側は独占生配信によって過去最多視聴者を更新。投資に見合った効果を上げたと言えるが、歴史的瞬間を多くの国民に見せられなくなった協会は痛手を被った。サッカー好きの人々は当然のようにDAZNに加入しただろうが、一般家庭は必ずしもそうとは言えない。未来を担う子どもたちがサッカーの醍醐味を知る機会を逃したとなれば、この先のサッカー人気にもマイナス効果が出るかもしれない。

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