「自分が高齢者になる頃の日本には頼りになる年金制度はない」。こんな不安を抱く若者は少なくない。少子化と経済停滞が続く日本の先行きに加え、世界で最悪の公的債務状況に対する懸念も絡み合っているようだ。
ただ、肝心要の公的年金システムの趣旨やその本質を理解しないまま、過剰な不安を抱いている人も少なくない。どんな不安が過剰なのかを区分けしながら、真の課題と対処方法を見ていこう。
公的年金は正式名称が「厚生年金保険」などであるように、高齢になって働くことが困難になったときの所得を確保するための保険だ。高齢期に必要な所得総額はどれだけ長生きするかによって変わってくるが、自分がいつ死ぬかは誰も予測できない。そこで公的年金は、現役時代にみんなで保険料を拠出しておき、より長生きした人に多くの給付を行う「掛け捨て保険」として機能している。
公的年金が存在せず、個々人の自助努力による積立貯蓄で高齢期の所得を確保しようとした場合、寿命次第で貯蓄の不足や使い残しが発生する。その結果、幸福が阻害され経済全体の効率性においても弊害が生じかねない。それを踏まえ、公的年金は、高齢期の防貧政策としての機能を、保険の仕組みによって効率的に発揮している。
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