41歳でプロ棋士に、遅咲き男の「夢と矜持」 挫折の数々、今泉健司さんの定跡外れの人生

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今泉さんが働く介護施設の方々から贈られたメッセージ

――二度目の奨励会退会後は、証券会社勤務を経て、地元の広島県福山市で介護の仕事につかれました。

介護職について、自分の心境に変化が現れました。認知症の方々のお世話をする中で、たくさんの「ありがとう」という言葉をいただきました。すると、自分が「ありがとう」と言われる立場にいること自体に感謝の気持ちが湧いてきて、自分自身も「ありがとう」と言いたくなるのです。「ありがとう」という言葉は、不思議と連鎖していくものなのですね。

そうして感謝の気持ちをもって働いているうちに、将棋以外にも自分の居場所があるのだと思うようになりました。自分にとっては、それが精神的に良かった。将棋と仕事の二つがうまくかみ合って、かえって時間を有効に使えるようになりました。

マイナス感情を吐き出した

――自分の存在価値を認めてくれる場所があるということが、精神的な支えになったということですね。

それがメンタル面の強さにもつながりました。編入試験の第3局、2連勝後に初めて負けたときは、正直とても落ち込みました。おそらく、この世の終わりみたいな顔をしていたのでしょう。新聞記者の方が「今泉さん、まだ何も終わっていませんよ」と声をかけてくれました。

第3局の敗戦後、自分の気持ちを紙に書いて、全部吐き出すようにしました。マイナスの感情は、胸に仕舞いこんではダメなのです。そして、書き出した項目を一つ一つ客観的に検証して、自分なりの解決策を考えていった。この作業に1週間くらいかかりましたが、そのお蔭で第4局に落ち着いて臨むことができました。メンタル面のコントロールができるようになったのが、これまでの自分との大きな違いですね。

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