しかしドラマで2045年の世界だけを示すわけではありません。ドラマとドキュメンタリーの組み合わせにしたことが今回のポイントです。2015年の時点でいったいテクノロジーはどこまで到達しているのか、ということを押さえたうえで未来を展望する、という構成にしました。
10~30歳の人々にメッセージを届けたい
――ウェブサイトと連携するなど、番組の作り方も斬新なものになりました。
30年後にメインストリームを担う今の10~30歳の人々に届けばいいな、と思っています。NHKの視聴者はどうしても若い人たちが少ないです。普段あまりNHKの番組を見ない、若い人に届けるためにはどうすればいいか、ということを考えました。今回は、ウェブサイトのデザインについてもある意味、NHKのイメージらしくないスタイリッシュなものに、さらに人工知能を搭載し、双方向性を打ち出すなどの工夫を心がけています。このウェブサイトの制作をしているのは、番組第1回の生放送オープニングのテクニカル演出を行った、真鍋大渡さんのライゾマティクスのチームです。
――1月3日(土)の第1回 が「未来はどこまで予測できるのか」、4日(日)の第2回が「寿命はどこまで延びるのか」でした。1つ伺いたいのが、寿命の問題です。
これは多くの視聴者にとって関心のある話題ですが、一方では「カネを持っている人が長生きをできてしまう究極の格差社会になる」という懸念も心に浮かびます。その点は、どのように考えていますか。
テクノロジーが誕生した最初の段階では、そうなるでしょう。ただ普及をしていけば、それが安価になっていき、多くの人がその便益を受けられるということは歴史が示しています。ただ社会的な衝撃は非常に大きいでしょうね。実際にマウスのレベルでは、人間でいえば60歳に当たるマウスを20歳へと若返らせる実験に成功したという研究成果が出ています。
これがそのまま人間でも有効なのか、ということは、今は何とも言えません。もし研究が進み、若返りが可能になった場合、若返った人間がどのように社会で生活をしていくか、ということも課題ですよね。第2の人生、第3の人生ということを生きられるようになるかもしれないので、素晴らしいことではありますが、社会的にはいろいろな混乱を招く危険性もあると思います。
――3回目以降の見どころをご説明ください。
第3回(1月24日〈土〉放送)のテーマは、「人間のパワーはどこまで高められるのか」です。番組にも登場する理論物理学者のミチオ・カク博士は遺伝子を操作することで100mを9秒切るスピードで走る人間も出てくることもそう夢物語ではないと予測しています。また、人間の脳を肉体から解放しコンピューターの中で永遠に生き続ける、というプロジェクトを実現しようとしているロシアの実業家や、脳で考えるだけで動き始める「ロボットアーム」なども紹介します。