――これは「テクノロジーが拓く未来」について深く掘り下げた、年初にふさわしい番組だと思います。まず30年後の2045年を展望する番組を作ろうとしたキッカケについて教えてください。
まず、ここに至るまでに作ってきた番組が背景にあります。2010年に仮想現実が広がっていく様子を描いた「世界ゲーム革命」、2012年にはスーパーコンピューター「京」が出たタイミングで「コンピューター革命」という番組を作りました。そして2013年には、福島第一原発事故後、人に役立つロボットとは何か、についてまとめた「ロボット革命」を制作しました。
怖がってばかりいても仕方がない
NHKのドキュメンタリーは、啓蒙的なもの、警鐘を鳴らすものが多い。そのため「2045年」という未来をテーマにするならば、そのネガティブな面も含めて検証をしていくのが、ある意味ではNHKらしいともいえるかもしれない。それはNHKのとても大切な役割です。しかし、怖がってばかりいても仕方がない。テクノロジーの進化というものは不可逆のものであり、それを前提として、われわれはどのような心の準備をしなければいけないのか、ということを心がけて作ってきたのが、これらの番組でした。
今回も、基本的に未来をポジティブにとらえています。もちろん、議論を呼ぶようなテクノロジーも出てきますが、ポイントとなるメッセージは「未来を作るのは、今生きている私たちの選択の結果なのだ」ということ。何を選んで何を選ばないか、ということを、視聴者の皆さんが考えるきっかけになればと思います。
――ゴールを「2045年」にしたのはなぜでしょうか。
番組にも登場する未来学者のレイ・カーツワイル博士は、「今から30年後までには、コンピュータの能力が、人類のすべての脳を足し合わせた能力をも超えるようになるだろう」と述べています。これをシンギュラリティ(技術的特異点)と呼んでおり、ここで力関係が逆転する。そこで番組中のドラマも含めて2045年に設定しました。