人工知能の進化は、人類の「全知性」を10億倍にする
みなさんのお手元には、手の平サイズのスマートフォンがあると思います。もちろん、私も持っています。このスマートフォンの性能がどのように変化してきたかご存じでしょうか。
1970年前後、私はマサチューセッツ工科大学(MIT)の学生でした。当時実験に使用していた最先端のコンピュータは、今のスマートフォンの数十億分の1の性能しかありませんでした。当時、スマートフォンと同じ性能のコンピュータを作ろうとしたら、およそ10億倍ものコストがかかったはずです。大きさにしても、手の平に乗るスマートフォンは、当時の大型コンピュータに比べてわずか10万分の1になっています。
あのときから45年。この間に遂げた性能、コストパフォーマンス、キャパシティの著しい発展はすさまじい勢いです。実は、それはさらに続きます。しかもここから先は、指数関数的な増加を見せると考えられているのです。
ご存じのように、指数関数は、爆発的な伸びを見せる関数です。直線的な数字では「1・2・3・4・5」と進んでいくところ、指数関数は「1・2・4・8・16」と進んでいきます。5回目ではそれほど大きな違いに見えませんが、30回を超えるとどうでしょうか。直線的な数字の進行では「30」ですが、指数関数的な進行では「10億」になります。40回を超えると「40」に対して「1兆」、その差はもはや比較の対象にすらなりません。
指数関数的に発達した30年後の2045年、コンピュータの進展とともに人類はどうなっているでしょうか。私はこう考えます。
「人類の生物学的知性とコンピュータの人工知能を組み合わせた『人類文明の全知性』は、現在に比べて10億倍になっている。そのとき、コンピュータは血液細胞とほぼ同じ大きさになっている。人類は脳の内部にこのテクノロジーをはめ込み、脳をクラウド上に置き、思考をさらに大きくする――」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら