文明は、過去も将来も指数関数的に進化する カーツワイル氏が語る「シンギュラリティ」

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技術に危険性があったとしても、それに対してできることがあります。新たなバイオウィルスを作るためにバイオ工学を用いるバイオテロリストを例に挙げましょう。炭疽菌などの恐ろしい生物兵器が生まれるのは恐怖でしかありませんが、一方で、人類を病気や加齢の恐怖から遠ざけることもできるというメリットもあります。

第2回「寿命はどこまで延びるのか」より。ナノマシンが体内を駆け巡り、自動的に病気を治療する日も近い?!(画像・NHK)

私は、新たなウィルスを検知し短時間で解析するシステムを持つ米軍と働いたことがあります。HIVウィルスを解析するためには5年という長い時間が必要でした。しかしSARSウィルスに要した時間は約31日です。今ではRNA干渉といった新たな技術を使って、新たなバイオウィルスと格闘する薬が数日でできるのです。

人工知能は、多くの未来映画で見るような「悪い知能マシン」対「人間」という図式にはなりません。この技術は、人類とコンピュータを融合するものだからです。

この技術を開発するためのコストは、毎年およそ半分になっていきます。このような新たな技術が生まれたばかりのころはうまく機能しないので、裕福な人しか購入することができません。

ですから現時点での人工知能は、20億人の手の中にあるものです。しかし、実際にうまく機能するころには非常に安くなり、最後にはほとんどタダに近い金額になります。いずれは、誰もがこの技術を享受する時代がやってきます。これが人工知能と人間との融合です。それによって私たちは自分たちをより賢くし、知能をより高いレベルに向上させていくことができるようになるのです。

もちろん危険性はあるかもしれない

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では、本当に危険性はないのでしょうか。それも完全にないとは言えません。しかし、人類はその危険を可能な限り減らしながら、乗り越える戦略を見出すことができると信じています。

それは簡単な解決策ではないかもしれませんが、人類は安全性を優先しながら新たな技術を開発することに長けているはずです。

「私たちは、いかにしてこの新技術を人類の問題解決のために使えるのか」

「私たちが、この新技術をいかに安全に保てるか」

人類は、難しいふたつのハードルを乗り越えると私は確信しています。

NHKスペシャル取材班
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