衰退産業で稼ぐ!「夢の魚」を編み出した男

愛媛産のシラスが全国で飛ぶように売れるワケ

この茹で上げたシラスを、急速冷凍しプールする事で鮮度が高く美味しいままのシラスを安定して供給する。シラスが生命力が弱い魚であることを逆手にとる事で、希少価値の高い製品を作り出しているのだ。

もう一つのキモが販売だ。今でこそ朝日共販のシラスは、イオングループなどの大手デパートや回転寿司チェーンから注文が殺到する大人気商品。全国のバイヤーが買い付けにやって来る。だが、福島さんが漁師を始めた20年以上前は「どこのシラスも一緒」と切り捨てられていた。

シラスには「大間のマグロ」のように収穫地のブランドイメージで勝負できる強みはなかった。どれだけ鮮度にこだわって、おいしいシラスを獲ろうとも、それだけで売れるワケではない。ましてや、愛媛の片田舎までバイヤーが買い付けにやってくる事などありえなかった。

体験により「ストーリー」を売る

そこで福島さんは自ら営業に出た。東京、大阪などからバイヤーを佐田岬まで招待。そこで漁を体験してもらい、獲れたてのシラスを使った料理を食べてもらう。福島さんこだわりの鮮度の良さをバイヤーは身を以て知る。後は簡単だ。自然と受注が舞い込んで来る。この美味しさを体験するストーリーで、バイヤーから注文が殺到した。漁獲と加工を行うシラス漁師だからこそなせる技といえる。

「一介の漁師がよくここまでやったな」。福島さんは周囲からこう言われる。「美味しいけど売れない」状況を打破するアイデアが、シラスを「夢の魚」に生まれ変わらせた。

朝日共販では、釜揚げシラス以外にも「シラスアイス」「ちりめんパン」「シラス煎餅」などお土産用の製品開発でビジネスの幅を広げている。過去には「シラスカレー」も開発したが、シラスの味がカレーにかき消されてしまい失敗に終わった。トライアンドエラーを繰り返す事でヒット商品を生み出している。

福島さんは、「鮮度が保てないシラス」「都心から遠い田舎」という欠点を、逆に利用する事で、差別化したビジネスモデルを確立した。グローバル化が進む中、日本の農漁業は競争が激しくなる。産業の高齢化が進み、衰退する今だからこそ視点を変えることが求められているのかもしれない。

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