往路に関してはすべてトップでゴールテープを切っており、往路優勝の確率は100%だ。5区が最長になる前の9大会を振り返ると、5区で区間賞を獲得して総合優勝したのは1997年大会の神奈川大だけ。往路優勝も同年の神奈川大の1回だけになる。距離が2.5km伸びただけの影響が、思わぬ“大差”を生んでいるのだ。
「山の神」が入学するかは“神”のみぞ知る
距離が延びた2006年大会からの9レースで1時間20分を切ったのは、今井正人(順天堂大)、村上和春(駒澤大)、駒野亮太(早稲田大)、安西秀幸(駒澤大)、柏原竜二(東洋大)、小野裕幸(順天堂大)、大江啓貴(明治大)、山本修平(早稲田大)、設楽啓太(東洋大)、服部翔大(日本体育大)、馬場翔大(駒澤大)、三輪晋大朗(東京農業大)の12人。
1時間19分を切っているのは今井、駒野、柏原の3人だけで、このレベルになると“神の領域”ということになる。ちなみに1時間20分台で走っている選手も17人しかいない。
日本体育大の別府健至駅伝監督は、「適性のある選手を育てて、1時間20~21台で走らせることはできると思います。でも、1時間19分を切るような選手を育てることはできないでしょう」と話す。
「山の神」と呼ばれるような選手の育成はほぼ不可能で、高校では箱根5区のようなレースはないため、そのセンスを見抜くのも難しい。「山の神」が降臨するかどうかは、“神頼み”の世界なのだ。
従来の5区は「上りが強い選手」の起用がメインだったが、平坦部分の距離が長くなったことで、「上りの適正」+「距離の適正」+「走力」が求められるようになった。すべてを兼ね備えている選手はほとんどいない。しかも、“花の2区”にもエース級を投じないと、序盤で遅れてしまう。どのようなオーダーを組むべきか。5区が最長区間になり、指揮官たちの悩みは大きくなった。
実際には数人の“神(レベルに近い選手)”と大多数の“生け贄”という構図になっている。そのため5区を予定する選手の実力によって、チームの戦術はまったく変わってくる。5区で攻める。もしくは、5区を耐えてほかの区間で勝負する。大きく分けて、この2パターンだ。
原則、コースの試走は禁止されているので、練習で箱根の山を走るのは難しい。かといって、上りが得意というだけで、5区のコースが攻略できるほど甘くはない。5区の重要性を察知した指揮官たちは、上りを得意とするエース級の選手たちを投入してきたが、返り討ちに遭うケースも少なくない。
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