ライバル、戦友、友達…「同期」という謎の存在

「仁侠映画」から読む、日本企業独特の仕組み

しかし、就業規則や雇用契約の中には「同期」という言葉も概念もない。まったくインフォーマルな集団なのに、なぜ社員も会社もこれほどコミットしているのか。不思議なのである。

これだけ大きな役割を果たしている「同期」であるが、経営学や労働経済学の中で見るべき研究はまったくと言っていいほどない。MBAを取得して海外でのビジネス経験も長い先輩に聞いてみると、欧米には、「同期」という概念は存在しないというのだ。

こうして考えてくると、日本の会社組織の特質が、この「同期」という存在に反映しているのではないかと思えたのである。

タテの関係に対するヨコの関係

多くのビジネスパーソンに対する取材から浮かび上がってきたのは、日本の多くの会社組織では、社員にスキルや技能をそれほど要求していないことと、上司と部下のタテの人間関係およびその序列関係を重んじていることだった。そこでは、人の個性に焦点を当てない能力平等主義とでも呼ぶべきものが背景にある。

関西大学東京センター長で、京都大学名誉教授である竹内洋氏は、日本で唯一ともいえる同期についての本質的な議論を展開されている(『選抜社会』〈リクルート出版〉、第8章「〈同期の桜〉と日本的経営」)。

その中で竹内氏は、輩・後輩というタテの関係と同期というヨコの関係は、別々に見るのではなく、セットになったもだという。「同期意識が強い(弱い)企業は先輩・後輩意識も強く(弱い)、逆に、先輩・後輩意識が強い(弱い)企業は、同期意識も強い(弱い)はずだ」と述べられている。

繰り返しになるが、日本の多くの会社組織は、人の持つスキルや専門性をそれほど重視しない。しかし、それでは組織運営ができないので、組織内に一体感を持たせる必要性がある。

そのひとつは、外部と組織内部との間に境界を設定して、組織内の結束を高めるというやり方である。もうひとつは、入社年次などで序列づけをしながら、人と人とのタテのつながりの中で組織を維持しようとするのである。年功序列の意味合いのひとつはここにある。

ところが、このタテの関係だけでは、個々の社員は自分の個性を発揮できず、ほっとできる場も求めているので、ヨコの連帯を強める同期入社にポイントをおいているのだ。

同期入社のメンバーの中に、仲間や友人を見いだそうとする共通した心情がある。取材しながら私の頭に浮かんできたのは、高倉健と池部良、菅原文太と梅宮辰夫や小林旭が互いに語り合う映画のシーンだった。

同期は、社内のヨコの結び付きにすぎないが、会社の枠を超えたところで、人とのヨコのつながりを持つことが、タテ型の組織に属しているビジネスパーソンには大事だと思うのである。ヨコの人間関係が充実すれば、窮屈で、苦々しく思えるタテ型の組織に対する見方も変わってくる

働かないオジサンは組織のタテの関係に埋没している人が少なくない。イキイキと仕事をするためには、この人と人とのヨコの結び付きを紡ぐ必要があるのだ。

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