ライバル、戦友、友達…「同期」という謎の存在

「仁侠映画」から読む、日本企業独特の仕組み

「昭和残侠伝シリーズ」は、昭和40年代に9作撮られた。それぞれの作品の設定やストーリーにつながりはないが、基本のパターンは同じである。

花田秀次郎(高倉健)と風間重吉(池部良)は、幼なじみなのにおのおのが対立した組に所属して争いに巻き込まれたり、組長の花田に横車を押す組の幹部がたまたま風間だったりで、厳しい序列と上意下達の組織のしがらみで互いに敵同士になる。しかし最後は、2人が協力して悪の権化に殴り込みをかけるという構図である。

「仁義なき戦いシリーズ」の主人公、広能昌三(菅原文太)も、呉を本拠とする必ずしも大きくはない組を率いているが、かつて旅をしていた中で、神戸や山口など各地の組に、自分の心を許せる義兄弟というべき存在を持っている。そのため組織の圧力の前に優柔不断になりがちな多くの幹部の中で、堂々と正論を述べることができる人物として描かれている。

つまりタテ型・序列型の組織に所属する中で、ヨコの関係をうまく作ることが、自分を活かす道であることを両映画は示している。歌も映画もヒットした北島三郎さんの『兄弟仁義』や、北野武さん監督の映画『アウトレイジ ビヨンド』にも同様の関係がみられる。

そしてこのタテ型の組織の中におけるヨコのつながりが、2人の俳優をスターダムに押し上げたと思えるのである。そうであるならば、多くの人の心の中にも、人とのヨコのつながりの大切さ・あこがれが、原型として存在するのではないだろうか。

「同期入社」の不思議

私は、現在、日本型の雇用システムの特徴を本にまとめようとしている。政府が年功序列賃金の見直しにも言及しているので、根本の考え方を整理してみたくなったのだ。

その取材の中で、先ほど述べた映画のことが、時々、頭を巡っていた。その2人が相次いで亡くなられたので、何かの因縁も感じるのだ。

引っ掛かっていたのは、会社の「同期」のことだ。

最近、ビジネスパーソンから直接、相談を受けたり、悩みのメールをもらったりすることがある。その際に、彼らが会社での自分の評価を語るときには、必ずと言っていいほど同期入社のメンバーとの比較を持ち出す。

「同期の半数は管理職になっているのに、私はまだ昇格していない」「同期から2年遅れて課長職になった」「かつては同期のトップを走っていた」といった具合である。そこでは、仕事上の能力やスキルの話はほとんど聞かない。そういう私も若いときは、やはり同期との比較で自分の評価を考えていた。

同時に、組織側も同期入社を横並びにして評価している会社が少なくない。特に伝統的な会社はそうであろう。

また、部署の枠を超えた仕事では、相手の部課に同期がいるとスムーズに案件が進む。仕事で悩んだときに、心を許して相談できるのは同期であると、多くの社員が語るのだ。

テレビ番組でも、高視聴率をたたき出したドラマ「半沢直樹」は、同期入社者たちの絆の話を除くと、物語は成立しないと思えるほどだ。

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