アマゾンは、なぜ出版社を「格付け」するのか チャン社長「ぜひともビジョンを共有したい」
山田:電子書籍の分野からは多くの企業が撤退しました。楽天も赤字を出しながらやっている状況です。これはパソコン全盛期を彷彿とさせます。マイクロソフトが強かったときにパートナー企業はそれを恐怖に感じました。自分たちの都合のいいようなことを一方的にやるのじゃないか、と恐れています。
チャン:私たちはパートナーとも顧客とも長期的な関係を構築しようと考えて、さまざまな投資を続けています。データセンター、フルフィルメントセンターなどです。コンテンツについてもそうです。長期的な関係を築くことを考えていなければ、このような投資をすることはありません。
アマゾンが自分たちの利益だけを追求していくということはありません。顧客が幸福になることによって、市場が縮小している産業が再成長するためのソリューションを提供できるのです。価格下落に歯止めをかけることにもつながると思います。かかわっている人たちが全員ハッピーになることを目指しています。
アマゾンは長いスパンで事業をみている
山田:本当に全員ハッピーになれるでしょうか。今、その方向に進んでいるとお考えですか。
チャン:私たちは、非常に長いスパンで事業をみています。すでに日本で14年前に書籍を扱っております。キンドルは、まだ2年ほどの歴史しかありませんが、つねに長い目でみてきました。やるべきことは、まだまだいろいろあります。
この数年で、出版社のあり方は大きく変わってきたと思います。電子書籍への取り組みやプロセスも大きく変わってきています。多くの出版社がこの2年で電子書籍を、より早くリリースできるように体制を組みました。この件だけをみても、多くの出版社がわれわれと同じ方向、すなわち読者が求めているものを実現するために投資を進める方向になったと思います。
山田:日本では公正取引員会が紙の書籍について再販価格維持を認めており、多くの出版社がその維持に強い関心を持っています。このことをどのように考えていますか。
チャン:私たちは各国の仕組みに従っています。現地のパートナーとも長期的関係も築きたいと考えています。中でも出版社は非常に重要なパートナーであり、再販制度を尊重します。しかし、(再販制度の縛りがない)電子書籍については、価格は重要な要素です。どのようなタイミングにどのように値付けをすれば、より多く売れるのかということについての知見を出版社と共有したいと考えています。実際、多くの出版社は電子書籍については価格に対する柔軟性を持っています。
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