私もこれは「マタハラか?」と一瞬考えた経験があります。2009年のことでした。第2子を妊娠した私はある事業の責任者でしたが、リーマンショックから1年、事業は右肩下がりに落ち込んでいる時期でした。私なりにできることはなんでも必死にやっていたつもりでしたが、どんどんと業績は悪化していきました。
上からの叱咤はあっても、激励のない日々。能力の限界を感じながら、もうすぐやってくる「産休」がちょっと楽しみで、早く解放されたい気持ちになっていたのを思い出します。
産前休暇は1月下旬からでしたが、12月中旬に私は役員に呼ばれました。1月からの人事についての話です。これまでの事業責任者の役職を解かれ、いちメンバーとして新規プロジェクトに参加するように命じられたのです。
休みに入るまでのたった3週間ですよ? これまでの慣習から、役職のまま産休に入るものと思い込んでいた私は正直、衝撃のあまり言葉を失いました。たった3週間だけの人事なんて……。そしてそれが産休前の職場となり、育休後はそのポジションで復帰することになる。臨月に近い体で、何もできないとわかっていて、こんな人事をするなんて! ぐるぐると頭の中にいろんな人の顔が浮かびました。
3月出産予定の私に、役員は「5月に戻ってこれないか?」と聞きました。そのプロジェクトで私に担わせたい役割についても熱く語っていましたが、私の耳にはほとんど何も入ってきませんでした。屈辱感だけがあったのです。
「5月には戻らない。1年後の4月に戻る。その間にいろいろ考えたい」とやっとのことで伝えると、役員は私をじっと見ながら、「お前の今いる場所は重要ポストだ。これまでの知見でこなせるような役割ではないのに、お前には圧倒的に学びが不足していた。できる人にポストを渡すべきだ。お前はこの現実を受け止めなければならない」と言いました。私がポストをクビになった瞬間です。
これは、「妊娠・出産を理由にした嫌がらせ」だったのでしょうか。
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