2万人熱狂!「アドテック東京」がつくる異界 本音トークが飛び交うビジネスイベント

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人と人とを”編集”し、イノベーションを起こす

:各カンファレンスのスピーカーたちは、どのように決めるのですか? 「どの人とどの人を結びつけるか」という高度な編集能力が求められそうです。

武富:「イノベーションが生まれるか」をひとつの軸にしています。アドテックを開催してきてわかったのは、イノベーション以外は、ビジネスではないということです。イノベーションがあるからこそ、新しいビジネスが進化し、大手企業のビジネスモデルも陳腐化していきます。

古市優子氏。休日は観劇、映画鑑賞、美食、旅行などをして過ごす。

:話すテーマは毎回変わっても、イノベーションという一つのテーマに軸足をおくのはいいことですね。聞いてる方も発見がある。おっしゃるように、日本の企業では、ゲームチェンジを起こそうとする人は異端視される傾向がありますよね。どちらかというと、既存のゲームの中での戦い方を考える人が多いように感じています。

武富:イノベーションは偶然の出会いで起きるので、絶対に出会わない二人を出会わせる必要がある。そのために必要なのが”編集”です。誰と誰を組み合わせてセッションするかという決定権は若い古市に持たせました。どんな偉い人も古市のオッケーがなければ出られません(笑)。

古市:あえて対立する意見の人同士を配置してみたりすることもあります。大企業で30年勤続されている方と、世界中を旅しているような方を結びつけたこともありました。はじめは「えっ?」ってなったと思うんですけど、やってみたら人気セッションとなり、アドテック関西でも同じテーマで登壇します(※本稿掲載時にはアドテック関西2014は終了)。なかには、「その人が出るなら出たくない」とおっしゃる方もいます。挑戦的な組み合わせをすることもあるので、敵も多いんです。でも、それが嫌なスピーカーには、「でしたら出演いただかなくても結構です」と言える立場にいることは大きいと思います。

武富:先程も申し上げたとおり、人とテーマを決めるのは私たちですが、話す中身は基本的にスピーカーの人たちに決めてもらいます。各セッションの告知や宣伝もスピーカー自身にお願いしています。

:ビジョンを決めて中身は任せる。CGM的とも言えますね。

武富:そうです。まさに、CGMです。

:アドテックは関西や九州でも開催されています。地方で開催する意味はどこにあるのでしょうか?

武富:東京との情報格差が激しいので、それを埋めるために開催することが使命だと考えています。

古市:関西は2014年11月が初開催です。武富が2009年に東京で初開催した時にやっていたように、ゼロからつくっている状況で、スピーカーの方からの「交通費は出ないの?」といった質問に答えることからスタートしました。

:スピーカーの決定権もそうですが、若い古市さんにかなりの部分、裁量を渡している印象があります。どのような上司と部下の関係なのでしょうか?

武富:私は50歳になったので、もう現場に出ることはしなくていいかなと思っています。私のすることは事故が起こらないように、後ろで安全管理をすることくらいです。

古市:最近では、さまざまなニュースキュレーションサービスの関係者を集める「ニュースサミット2014」というイベントも、会場を決めるところから立ち上げを任せてもらいました。

:社員は何人ですか?

武富:6人です。

古市:全員で集合するのは、月に1回くらいですね。

:意思疎通はどのように行っているのでしょうか?

古市:対面ではなかなか会えないので、Facebookでグループを作り、メッセージでコミュニケーションしています。普通の会社だったら私信で行われるお叱りのメッセージも全員に返信されますので、それを見て「あ、あれをすると怒られるんだ」ということがわかったり(笑)

取材後、武富氏(左)はすぐに海外へ。イベントを視察しに行くという。右は嶋浩一郎。

武富:メッセージでは日報も送ることになっています。新しくやったこと、既存の進捗、伝達、相談、備忘録を共有します。忘れると、寄付をするというルールになっています。

古市:けんかも多い会社なんですよ、特に社長との(笑)。良い意味で対等なんです。

:アドテックと同じように建前がない本音トークの会社ということですね。最後に、今後のビジョンを教えてください。

武富:日本でアドテックを5年間開催してある程度定着し、他国に比べても引けをとらない規模になってきました。いままでは、海外で開催されているアドテックを真似していればよかったのですが、これからはそれだけでは駄目だと思っています。ですから、アドテックに限らず世界のあらゆるイベントを回っています。現在、世界では知的産業のグローバリゼーションが起きています。そこの中で日本は戦っていかなければいけません。一方、海外の方から見た日本の強みは、「クリエイティブ」と「クロスメディア」の組み合わせなんだそうです。クロスメディアでいうと、SuicaやポスターのQRコードなどがその一例ですね。これからは、日本自体を編集していかなければいけない時代です。そのために、イノベーションを起こす場としてアドテックがあり続けたいと思っています。

(構成:宮崎智之)

嶋 浩一郎 博報堂ケトル共同CEO

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しま こういちろう

博報堂ケトル共同CEO・クリエイティブディレクター・編集者
上智大学法学部卒業後、93年博報堂に入社、コーポレートコミュニケーション局に配属。企業やブランドのPR・情報戦略に携わる。01年朝日新聞社に出向、「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年博報堂刊「広告」編集長。本屋大賞の立ち上げに参画。06年既存の広告手法にとらわれないクリエイティブエージェンシー博報堂ケトル設立。カルチャー誌「ケトル」の編集長もつとめる。
主な仕事:KDDI、J-WAVEなど。主な著書『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』など

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