「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」 行き詰まる、ネット広告の自動取引

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渡辺健太郎(わたなべ・けんたろう)●マイクロアド社長。1974年宮城県生まれ。東邦大学理学部卒業、1999年サイバーエージェント入社。2007年マイクロアド設立、同年から現職。
アドテクノロジー、略して「アドテク」。その中身を正確に理解している人は少ないかもしれないが、ネットを利用しているユーザーなら、誰もがそれと深くかかわっている。ネットの閲覧に伴って表示される広告の裏側には、アドテクがあるからだ。
代表例はRTB(リアルタイム入札)と呼ばれる仕組みだ。ネットの広告が表示される(インプレッションの)たびに、閲覧しているユーザー、広告が掲載される場所などさまざまな情報を分析したうえで、最適と判断できる場合に入札(オークション)方式で自動的に売買がなされる。広告主にとって高い効果が期待できるとされ、関連市場は急速に伸び、今年はフリークアウトやVOYAGE GROUPといったアドテク関連企業が上場を果たした。
ところが、アドテクの分野で代表的な企業で、サイバーエージェント子会社であるマイクロアドの渡辺健太郎社長は、「今までのアドテクは死んでいる」と言う。12月3日には「TSUTAYA」や「Tポイント」で知られるカルチュア・コンビニエンス・ クラブ(CCC)グループと提携。実店舗での購買情報をマイクロアドがネットの広告配信に活用する。渡辺社長の言う「アドテクの死」と結び付く話なのか。その真意は。

アドテクの中身は進化していない

――マイクロアドは、「2013年に前年比2.5倍の392億円まで拡大したRTB経由の広告市場が、2017年には1000億円まで成長する」と予測しています。それなのに今、「アドテクが死んでいる」とはどういうことでしょうか。

RTBが生まれる前はいわゆる手売りと言って、人の手を介して売買されていたネット広告がコンピュータによって買い付けられるようになりました。しかも1インプレッション(1回の広告表示)ごとにです。

マイクロアドがその関連サービスを始めたのは2011年で、市場として本格的に立ち上がったのは2012年。その後、プレーヤーがどんどん参入し、アドテクが注目されるようになりましたが、中身はそれほど進化していません。

RTBで自動買い付けしていく中で、ビジネスとして広告効果が出やすいのはリターゲティングです。リターゲティング広告とは、ユーザーがネットの中で、閲覧した関連した情報を文字どおり「追いかけて」広告を出す仕組みで、この分野はマイクロアドが切り開いてきたという自負があります。約6500万人の1日100億件を超えるユーザー行動データを駆使して、広告配信の最適化を追求してきました。

ただ、アドテク関連企業はリターゲティングばかり追いかけている。ブームに乗ってプレーヤーは増えましたが、新しい流れが出てきていません。このままだと飽和して行き詰まってしまいます。

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