2万人熱狂!「アドテック東京」がつくる異界 本音トークが飛び交うビジネスイベント

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ニューヨークのイベントで人生が変わった

:私も今年のアドテック東京に参加させていただきました。参加してみて思ったのは、単純に「楽しい」ということです。日本のビジネスイベントは胸にお花を付けた「先生」みたいな人がしゃべるじゃないですか。アドテックは登壇している人がリラックスしているし、聞いてる人たちとの距離も近い。なぜ、ああいうフラットなイベントを演出出来るのか、とても興味を持ちました。まずは、日本に誘致したきっかけを教えてください。

武富正人氏。趣味は「食べ飲み歩き」だという。

武富:私はもともと老舗広告会社に勤めていました。日本の広告業界が縮小するなか、どのような新しい戦い方があるのか、ずっと模索していたんです。そんななか、2005年にニューヨークで開催されているアドテックに初めて足を運び大変な衝撃を受けました。これが人生を変える転機になりました。

:どんな衝撃を受けたんですか?

武富:最も印象的だったのは、YouTubeとワシントンポストの女性同士によるセッション。「新聞社はもう終わりだ」「YouTubeはなにも生み出していない」などと、激しく戦っていました。今からするとよくある議論のように思いますが、当時はとにかく衝撃的で。そして内容もさることながら臨場感もすごかった。参加者とスピーカーの目線が一緒で。難しいテーマのはずなのにとにかく楽しかったんです。

:2013年にワシントンポストはアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏によって買収されますよね。日本のメディアがインターネットに対してどう対応するかおどおどしている時に、ニューヨークではすでにそういった議論が交わされていたということですね。しかも、みんながオープンで聞いてるイベントで。面白い。

武富:ニューヨークの後、サンフランシスコのアドテックにも参加しました。すると、今度もまた同じ女性同士が同じように戦っていて。セッションの最後にワシントンポストの女性が、「私は今月で会社を辞める!」と言い出したときは、大盛り上がりでした(笑)。YouTubeに軍配が上がったわけですね(笑)

:テクノロジーの進化でメディアコンテンツが変化していくという象徴的なエピソードです。それがライブのイベントで見れるなんて相当説得力がありますね。

武富:その頃は、電通、博報堂もネット広告ビジネスに積極的に乗り出し、サイバーエージェントなどのネット専業代理店も大きくなっていった時期でした。翻って自社は折り込みチラシと交通広告に権益が強い会社ですので、危機感が薄い。そのギャップに衝撃を受けました。私はMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏にならって97年に「インターネットショー in 秋葉原」という大型イベントを開催したこともありインターネットには詳しいつもりでしたが、ニューヨークとは比べものになりませんでした。

:それで、アドテックを日本に誘致しようとしたのですね?大胆だけど、面白い。

武富:そうです。どこが開催しているのかとチェックしてみたら、イギリスの「Daily Mail(デイリーメール)」という新聞社で、理念は一口で言うと、「イノベーション創出の場を作ること」と書いてある。まずは論より証拠ということで、世界で開催されているすべてのアドテックを回ってみることから始めました。それでわかったのは、アドテックはそれぞれの地域にカスタマイズして開催されているということです。

サンフランシスコはシリコンバレーが近いのでテクノロジー寄りの内容が多く、イギリスではBBCが強いのでテレビ系の話題、オーストラリアにいくとソーシャルビジネスのテーマが多いといった感じです。僕は当時、英語ができなかったので、ビデオを持って録画し、帰国してからすべてを翻訳し内容を理解しました。すると、面白い事実に気づきました。日本の広告業界では、世界のアドテックで言っていたことを、数年後にさも自分たちがはじめて言い出したかのたように喧伝していたのです。「なんだ、そうだったのか!」とビックリしましたね。

:ビデオで撮影なんてまるでオタクですね。日本に誘致したのはいつですか?

武富:2009年です。電通や博報堂などほかの広告代理店も手伝ってくれて、誘致が実現しました。その際、来日したDaily Mailの社長から、「日本法人を立ち上げてみないか?」と誘われ、「I can not speak English.」と言ったら、「No Problem.」と返されて(笑)。それで退社して、アドテックが上手くいかなければ潰れる今の会社を立ち上げたんです。

次ページ「アドテックは外国なんだ、だから腹も立たない」
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