なんと16万円!これが究極iPhoneケースだ 日本の小さな会社が高い技術で世界に挑む

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しかし結果として、順調に売り上げを伸ばしていくことができた。となると、技術革新にも熱が入り始める。たとえば5次元切削は、切削器を3次元、土台を2次元で動かしながら加工すること。3D CADのデータで表現しにくい加工へのチャレンジも、行ったという。

課題解決:ネジをなくそう

金属のわずかなしなりを利用して、ねじ止めなしで固定するITOIGAWA Latch。1/100の精度を実現しているからこそ、わずかなしなりが利用できる。取り外しは指でも出来るが、付属の小さな工具を使うと、よりスムーズに取り外すことが出来る

そうした中で、THE DIMPLEには、「ITOIGAWA Latch」という特許技術が使われていた。レビューの中で、「高い精度のバンパーをネジなしで固定できる」と書いた。まさにラッチのように着脱ができる仕組みは、ねじ止めが必要だった既存製品を刷新するイノベーションになった。

1/100の誤差もないバンパーのわずかなひねりを利用して着脱することができるようにするアイデアは、海外のユーザーからのニーズに応えるためだった。

日本ではSIMロックが一般的で、iPhoneのSIMカードを差し替えることは少ないが、特に複数の国を移動しながら仕事をするジェットセッターにとって、SIMカードの入れ替えは日常茶飯事。そのたびに時計に使うような精密ネジを飛行機の中で取り外すのは現実的ではない。

そこで、精密なバンパーをねじ止めなしで着脱できるITOIGAWA Latchを考案し、海外ユーザーの期待に応えた。

SQUAIRが経験したのは、グローバルなニーズの吸収による革新だった。日本国内だけを相手にしていては、SIMカード交換時の着脱のしやすさというニーズを吸い上げることはできなかっただろう。

しかもその解決を、日本の金属加工の確固たる技術と、柔軟な職人のアイデアを裏付けに行った点が、非常に興味深い。世界の課題を、日本の技術で解決する。そんな、これからの日本の活路ともなり得るエコシステムを、超高級iPhoneケースの上で展開することができたのだ。

前述の通り、日本にはモバイルに関する文化があり、多様化するこだわりと、様々な商品、使い方が存在する。

日本に根付く文化と技術の2つの「地の利」をいかそう

海外で生活していると、モバイルに関するビジネスを展開する開発者や企業は、少なからず日本での成功を狙おうとしていることが分かる。日本が米国に次ぐ第2のアプリ市場であることだけでなく、日本で認められることに特別な価値を帯び始めている。

そして、ITOIGAWA Latchのように、技術と柔軟なアイデアによる問題解決の土壌も備わっている。文化と技術の2つの「地の利」を生かすは、日本から世界へ、という商流を作り出す大きな武器になる。その地の利は、必ずしも東京などの大都市だけでなく、技術が根付く地方にこそ、可能性がある。

そんな気づきを、手触りのよいジュラルミンのiPhoneケースが教えてくれているのだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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