中国の常軌を逸した行動の裏にある不安--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト
好ましくない人物にノーベル賞が授与されるのは、中国政府にとって腹立たしいことに違いない。
最初の受賞者は、2000年にノーベル文学賞を受賞した反体制派の小説家、高行健氏だ。同氏は現在、パリに住んでいる。そして今年のノーベル平和賞は文芸評論家で政治活動家の劉暁波氏に授与されることが決まった。同氏は共産党体制の転覆を企てたとして服役中の身だ。中国人ではないがダライ・ラマ14世へのノーベル平和賞は、中国政府を最もいらだたせた。
劉氏の受賞に対する中国政府の対応は常軌を逸している。中国政府は、傲慢な態度で無視するか、公式な発言を控える代わりに、ノーベル賞授与が「中国を誹謗する企てである」と激しく抗議し、劉氏の妻の劉霞さんを含む著名な知識人10名以上を自宅軟禁するなどしている。高行健氏の受賞への反応は、それまでほとんど無名だった高氏の知名度を高め、中国国内でもよく知られる存在にした。
中国が世界を騒がしたのはそれだけではない。レアアースの禁輸など尖閣諸島問題をめぐる日本に対する脅し、人民元切り上げ要求に対するかたくななまでの拒否--。こうした行動を見て、人々はなぜ中国は外交関係でそれほどまでに強硬なのかいぶかしく思っているはずだ。
こうした強硬外交は、過去数十年間の老獪な外交とはまったく異質だ。これまで中国は、強硬外交で日本を翻弄
する一方、韓国と東南アジアには柔軟姿努で臨んでいた。そのため東南アジア諸国は、中国のパワーの増大を比較的好意的に受け止めていた。