中国の常軌を逸した行動の裏にある不安--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト


 そのため複数政党による選挙を要求し、共産党支配の正当性に挑戦する者は、たとえ高行健氏のように無名な人物であっても、容赦なくたたかなければならないのである。人民元切り上げを認めないのは、それによって経済成長が鈍化し、共産党がメンツと正当性を失うことになるからだ。日本への攻撃はつねによい選択肢である。中国の指導部は必ずしも日本が嫌いではない。しかし、幼稚園から「外国は中国を辱めようとしている」と教えられてきた国民の手前、彼らは日本に対して軟弱だと見られるのを恐れている。

このことは、劉暁波氏や志を同じにする反体制派の希望がかない、中国が民主化すれば、中国の国家主義の問題はなくなることを意味している。要するに国民は、日本やアメリカに迫害されていると感じているから、愛国主義的な政策を要求するのだ。しかしながら、国家主義は政治的な合意ではない。国家主義はしばしば無力感によって醸成される。権威的な政府によって力を奪われていると国民が感じるとき、次に国民が選ぶ道は国家が強くなることで自信を得ることである。

複数政党の民主国家であれば、国民は物質的、社会的、文化的な興味に心奪われ、攻撃的な愛国主義に引き込まれることは少ない。現在、多くの民主国家の状況は政治的自由を喧伝するほど理想的ではない。だが、中国国民は政治的自由について自ら決定する権利を持つべきだ。劉暁波氏には政治的自由を主張する栄誉が与えられるべきである。

(週刊東洋経済2010年12月4日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

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