博報堂の異色キャラはこうして生まれた 原田曜平×瀧本哲史 対談(前編)

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原田曜平(はらだ ようへい)●1977年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、(株)博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。近著に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』 (幻冬舎新書)、『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』(角川oneテーマ21)などがある。

原田:入社後、どうしてもCMプランナーの道に行きたかった。今だから言えることですが、大学時代、脚本ばかり書いていたので、大学のマーケティングのゼミで本当に不勉強でした。だから、自分なんかがマーケティング職種に就くべきではないと、会社のマーケティング研修の課題を大学の後輩にやってもらいました。ところが、その後輩は「先輩のために」と徹夜で頑張ってくれ、なんと優秀な成績をとってしまった(笑)。それで、マーケティング部に配属されることになります。

いろんな業務をちょこちょこ経験するうち、面白味も感じられるようになってきました。

最初に担当したのが、ある機能性食品の定番商品に味のバリエーションを加えるという仕事です。まず試作品の段階で、女子高生たちに試食してもらい、感想をグループインタビューで聞きました。その会社はオーナーカンパニーだったのですが、女子高生は正直ですから、社長一族のご子息がいる前で、「うわ、超まずい」「何これ、誰が買うの?」と好き放題言うわけですよ。

それを聞いたうちの営業マンが、ワイシャツが透けるくらい汗びっしょりになってしまって、「おかしいな、こんなにおいしいのに」とか言いながらめちゃくちゃたくさん食べてる(笑)。グループインタビューのモデレーター(司会者)も困ってしまって、「じゃあ、あなたたち、どんなふうに味を変更したら食べるかな?」と聞いたら、「これ塩味にしたらいいんじゃない」「かっぱえびせんみたいだったら食べるよ」と言い始めたんですね。

瀧本:なるほど。

人間同士のやりとりが面白い

原田:後日、その調査結果を検討する会議で、そのご子息が、「もう、塩味でいいんじゃないの」と女子高生の意見に引きずられて決めようとした。

そしたらたたき上げの工場長みたいな人が、机をバンとたたいて、「○○さん、あんた爺さんのこと忘れちまったのかい。うちは人の体にいいものをつくる会社なんだ。まずくて何が悪いんだ」と、すごいけんまくで怒る。将来の上司になるであろうそのご子息に。ご子息も素直に「確かにそうでした。すいませんでした」と頭を下げてる。「うわ、オーナーカンパニーって面白いな」と思いましたね。脚本書いていたくらいだから、人間観察が好きなんですね。だから、本業以上に、こうしたビジネスシーンにおける人間同士のやり取りがたいへん面白かった。

ところが2年目に、博報堂生活総合研究所というシンクタンクへの異動命令が出たんです。

もともと入りたかった業界ではないし、やりたかった職種でもないし、さらに想像していなかった部署への異動で、しばらくの間、やさぐれていた時期がありました。

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