エリーは持ち前の愛嬌と度胸、社交性と品の良さで周囲の人を少しずつ虜にしていきますが、これはフィクションならではのこと。現実はそうは甘くはないでしょう。
実際、エリーが置かれている環境は、実に苛酷です。
夫は夢ばかり口にして、ろくに働こうとしない。生活は厳しい。家賃も払えないし、お米も買えない。それなのに、義理とプライドにがんじがらめになって、身動きがとれないでいる夫。現代に置き換えるなら、まさに計画性なしに起業を志す男と結婚したようなものです。冷静に考えたら、劇中の人物たちに始終言われているように「そんな男やめてしまえ」と言われてもおかしくない生活。
ではいったい彼女は、どうやって日々の暮らしののモチベーションを維持しているかというと、それが「夫からの愛」と「夫の夢」。このふたつです。
エリーは「マッサンがいてくれたから、いつも楽しい。いじめられても平気」と気丈なところを見せ、「マッサンはいつか絶対、ウィスキーを作れる」と励まし続けます。
もちろん劇中のマッサンが、正真正銘の昔気質の貧乏日本男児ではなく、海外留学して国際結婚を選ぶようなリベラルさと、大きな酒蔵の御曹司という出自と、ことあるごとにエリーへの愛を言葉にして伝える優しさを兼ね備えているからこそ成り立つ幻想ではあります。
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