「学研」社長が今、新入社員に求める「3つの素養」 「カマスの実験」が教えてくれた組織変革の要諦
この頃の自分を思い起こすと、周囲の方々にさまざまなご迷惑をおかけしたことだろうと、今さらながら冷や汗が出てくる。だが、こうしてとんがって、何にでもチャレンジし、ひたすら経験を重ねることは、若者だけに許された特権ではないかと思うのだ。
所属していた神戸支社の業績を伸ばすことが最優先の課題であり、それだけに全神経を集中させていた。とにかく仕事に対して必死で、誰にも文句を言わせない実績を残していた。私のやり方に文句があるなら数字で示してみろ、と思っていた。
協調性がなく、他人を構う余裕がなかったと言われればそのとおりかもしれない。今にしてみれば、若気の至りと思うこともある。ただ、勤務地限定社員という肩書きで、防衛大学校を出て畑違いの民間企業というコースを経てやってきた自分には、誰よりも大きな結果を出すことでしか生きる道がなかった。
とんがって、がむしゃらに仕事をすることが、生きるための原動力となっていたのだ。
「カマスの実験」が教えてくれること
「とんがる」という言葉で思い出すのは、高校時代に恩師が教えてくれた「カマスの実験」の話だ。人間の学習に基づく行動について、絶妙なたとえ話で表してくれた。
大きな水槽を透明なガラス板で仕切り、片方にカマスを、もう一方に小魚を入れる。するとどうなるか。
カマスは小魚を食べようと何度もガラス板に体当たりをするが、そのたびにはじき返されて、しばらくするとカマスは小魚を食べるのをあきらめてしまう。そして、その後にガラス板を外しても、カマスは小魚に見向きもしないということだ。
今の環境に慣れたら駄目になってしまうから、挑戦することをあきらめずに頑張らなければならない。先生のこの言葉は今でも強く印象に残っている。
ところで、この無気力になったカマスに、もう一度小魚を獲らせるには何が必要なのだろうか。
正解は、新しいカマスを入れることである。
水槽に入ってきた新しいカマスは、「小魚は食べられない」という認識がないため、すぐ小魚を獲りに行く。そして、それを見て周りのカマスが「食べられたのか!」と気が付いて、自分たちも小魚を獲りに行くようになるというのである。
私が若いビジネスパーソンに期待するのは、この新しく水槽に入ったカマスのように思い切って行動することだ。とんがった個性を発揮して、周囲の意識を変えてほしい。社内を引っかき回すくらいでちょうどいいと思っている。
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