私たち「スマホを持った原始人」が得た大切なもの 寄藤文平さんが新しい手帳に込めた「哲学」

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『yPad moss』のスマホを持った原始人、Moss man〈モスマン〉(イラスト:寄藤文平)
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「あの頃、夜中の3時からの打ち合わせが、おかしいと思わなかった」

そう振り返るのは、グラフィックデザイナーの寄藤文平さんだ。

当記事は、AERA dot.の提供記事です

2010年に寄藤さんが生み出した手帳『yPad』は、スケジュール管理とタスク管理が一目でわかる、直感的に書き込める、と人気を博したロングセラー。そのユニークさがビジネスパーソンの心をつかんだ。

「当時はやれることは全部やろうと考えていました。当然、僕は仕事に追われることになりました。週に30以上の案件が同時並行するようになって、打ち合わせの開始時間が夜中の3時といったことも変だと思いませんでした。どう考えてもおかしいんだけど、なんとか工夫して乗り切ろうと考えてたんですね。そのためのツールとして誕生したのがyPadだったんです」

忙しさが“美徳”の時代は変わった

yPadが生まれた頃、日本ではまだまだ忙しさが“美徳”と言われる時代だった。しかし時代は変わり、コロナ禍にもみまわれた。今やわれわれを取り巻く環境、価値観、働き方は、加速度的に変化している。

寄藤さんが描いたMoss manたち

「『チマチマした電子アプリにはまねできない』なんて強気な言葉で、当時に話題だったiPadの向こうを張ってみせることが自分としては面白かったんですが、今となっては対岸にあるものがiPadでさえないですよね。もう、yPadの役目が終わったと感じたんです。コロナ禍で問われていることって、いくつもの仕事を寝ないで進めるとか、うまく時間管理して生産性を上げるとか、そういう種類の工夫で乗り切るような話ではないですし」

そこで寄藤さんは、2021年、yPadの発行停止を決意した。

次ページ反響が大きく、yPadを再定義し装いを一新
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