「格差をリセット」する教育本来の機能を取り戻せ 橋爪大三郎氏に聞く「大学システム改革論」前編
貧困とはどういう意味なのか
いまの社会は、貧富の格差が拡大し、多数の犠牲の上にひと握りの人がマネーゲームをしているという実態があります。踏み台になっている人びとのことを考えずに、「私はこれだけ儲かりました」などと自慢している。
『GAFA next stage』は、著者のスコット・ギャロウェイさん自身が、子供時代に貧困だったことを紹介しています。
彼は、母子家庭の出身でした。ある冬、母親が、暖かいコートを買ってくれた。彼はうっかり、それを体育館に忘れた。取りに戻ったが、もうない。母親の1日分の給料に匹敵する買い物だったのに。仕方なく、もう一着買ってくれた。ところが忘れっぽい彼は、それもなくしてしまった。
さすがにまずい。母親に詫びた。「コートなしでもボク平気だよ」と強がった。怒られると思ったら、母親は大声で泣き出した。ひとしきり泣いて、そのあと彼の脚を、テーブルでも叩くようにゴンゴン何度も叩いた。そして以後、二度と上着の話はしなかった。
このときほど辛かったことはないと著者は言う。貧困だと、ちょっとしたことで取り返しのつかない打撃を家族が受ける。
ある程度収入があれば、上着をなくしたぐらいでダメージはない。でも、ギリギリの生活だと、それが致命傷になる。教育や医療や食事や睡眠時間や、生活の基本的なところを削って生きて行く。それが貧困だ。その現実に目を向けない議論がまかり通っていることに、著者は怒っている。
起業家でバリバリのMBA教授である著者だが、ただのギョーカイ人ではない。経済の不正に対する厳しい目がある。
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