「たしかに給与水準の高い国・地域では高学歴化・晩婚化が進み、結婚後も必ずしもすぐ子どもを持たないなど、重要な決断を遅らせがちな傾向があります。
ただ、QLCは東欧諸国やトルコなどでも学術的な研究が行われています。たとえば、私の妻はイラン人ですが、近年はイランやインドでも結婚後しばらく子供をつくらず、パートナーとの時間を大切にする考え方が浸透しています。
インドやシンガポールのメディアでも、QLCの問題は比較的盛んに取り上げられています。こうした国々の若者は、周囲からのプレッシャーをより強く感じやすいだけに、QLCが共感されやすい面もありますね」
長寿化や情報革命などの影響で、世界中が大きな変化の最中にある現代。成熟国や先進国に限らず、新興国や発展途上国でも若者たちは変化のプレッシャーから逃れられるわけではないようだ。
では、そんなQLCに関する記事や話題に対して、各国の上の世代はどのような反応を示すことが多いのだろうか?
「イギリスでは『最近の若者は脆く、壊れやすい』『今の若者は恵まれた環境で育っていて、多くを望みすぎだ』といった反応が多く見られます。あくまで全体的な傾向で、対照的な意見を述べる上の世代の人たちももちろんいますが、一般論としては、上の世代は自分たちが若かった頃のことを忘れて、下の世代の悩みを軽視する傾向はあるでしょうね」
若者がさまざまな理由でプレッシャーを感じる一方、「最近の若者は……」と中高年者が語るのは、日本に限った話ではないようだ。
ロビンソン氏「日本の状況は興味深い」
「私が長年QLCに関する研究してきたこともあり、QLCの研究者にはイギリス人が多く、研究が比較的発展してきました。
日本では1.36(2019年)という出生率の低さが問題になっていますが、そんな中でQLCの概念が普及しつつある状況は興味深いです。おそらく経済的な問題など多くの原因があるのだと思いますが、私が聞き及んでいる限りでは、日本の若者の恋愛などへの考え方が、昔とは大きく変化している印象があります」
もちろんイギリスでも、日本と同様に出生率や人口減少の問題は存在している。だが、それを移民が補っている状況だという。
「“クォーター”という言葉にも表れているように、QLCは25歳前後に経験されますが、イギリスに移民してくる人たちの年齢は、25〜26歳が最も多いんです。イギリスへの移民者の男女比はほぼ半々で、性別を問わず先進国の若者の悩みと同じような認識から行動し、人生に何かしらの変化を求めてイギリスへやってきていることが見てとれます」
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