悩めるアラサーが「世界中で激増」する明快な理由 QLC研究の第一人者が語る人生100年時代の困難

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前置きがやや長くなったが、QLC研究の第一人者のロビンソン氏自身もかつて、QLCに悩んだひとりだったという。

「20〜27歳までロンドンに住んでいた私は、入社6カ月でマーケットリサーチ会社を辞め、当時付き合っていた恋人とも別れ、人生の転換期を経験することになりました。大変な期間でしたが、自分の気持ちに偽りのない生き方をしたいと思い、研究者を志して、QLCの研究を始めました」

2001年に科学ライターが提唱

ただ、QLCという言葉を使い始めたのは、ロビンソン氏ではないという。

「最初にQLCという言葉が提唱されたのは2001年のこと。多くの若者が直面する危機の事例をまとめた書籍(『Quarterlife Crisis: The Unique Challenges of Life in Your Twenties』/Alexandra Robbins・Abby Wilner)の中で初めて使われ、徐々に浸透していきました。

私自身は、研究を始めた2004年頃は、『アーリー・アダルト・クライシス』という言葉を、成人期初期の危機を指す言葉として使用していました」

それぞれ言葉の定義がはっきり限定されているわけではないが、「アーリー・アダルト・クライシス」の場合は30歳以上を含む幅広い年齢をイメージして使われ、QLCは比較的20代に対して使われることが多いという。

「アメリカやイギリスではすでに、QLCという概念は広く共有されており、SNSなどで『I’m having a quarter life crisis.』などとつぶやかれることも。ただ、QLCの厳密な意味合いを指しているわけではなく、『私は今、人生の難しい局面に直面している』といったふうに、決まり文句として使われることが多い印象です」

特定のワード・概念が広まるなかで、本来の定義とはズレた受け止められ方をするのは、しばし見かける現象だ。日本では「草食系男子」などが思い浮かぶが、逆に言えば、それだけQLCという概念が広まっている証明とも言えるだろう。

このように、欧米ではある種の決まり文句として使用されるほど認知度を獲得しているQLCだが、前述したとおり、ロビンソン氏は学術的な見地から論考を深めてきた。20世紀に活躍した発達心理学者・エリクソンのライフサイクル研究を発展させたのだ。

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