知的障害者の私が「オレオレ」の受け子をした理由 利用した知人男性に「正直、まだ会いたい」

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「せっかく東京に来たんだから、原宿か新大久保のネイルに行きたい」。彼女にはネイリストになるという目標があり、ぼんやりとではあるが進路を考えている。

昨年、「のんの相談支援事業所」の責任者・楠原公代さんから記者のもとに、「今度、特殊詐欺で利用されてしまった少女の受け入れ要請があった」との連絡を受け、裁判を傍聴した。「このように巻き込まれるケースが最近多く聞かれる」という。

中学生のときに軽度知的障害とわかった

長谷川さんは中学生のときに軽度知的障害とわかったそうだ。言語理解が苦手で、人に言葉で伝えることがとくに苦手だという。また記憶力や計算能力、集中力も低いとされた。

逮捕から初公判(3月)までの2カ月間で、事件を起こした長谷川さんには国選の弁護人がつき、社会福祉士が更生支援計画書を作成、釈放された際の受け入れ先(同グループホーム)も決まっていた。

3月中旬、東京地裁──。入廷した長谷川さんは緊張しているように見えた。《顔の向きは検察席に向かってまっすぐでも、気になるのか、目端(左)で傍聴席を見ている。きれいに爪を整えている》などと当時の取材ノートにはある。

一緒に逮捕された知人男性(実際は本名)や、氏名不詳の者らとともに、孫や孫の上司などになりすまし、80代の男性宅に何度も電話し、「仕事で現金を至急必要としている」「上司の姪にお金を渡してほしい」と伝えた。しかし、不審に思った80代男性が警察に通報していたことから、現金200万円(実際は警察が用意した偽金)の受け渡しの際に警察に現行犯逮捕され、未遂に終わった。

検察官が上記の公訴事実を朗読する。「間違いがないか」と裁判官から問われた長谷川さんは、「はい、はい」とうなずいたが、「間違いがないか」ともう一度念押しされると、ちょっと左に首をかしげて、自信なさげに「はい」と答えた。

証拠調べ・論告・弁論は次回日程で行われた。この日の初公判のなかで、長谷川さんの障害について触れられることはなかった。事前に生い立ちを教わっていなければ、傍聴席からは長谷川さんに知的障害があることがわからなかったはずだ。

(写真:弁護士ドットコムニュース)

彼女を東京に連れて行き、受け子の役割を与えたのが「知人男性」だ。現金受け渡しの現場にも付いて来て、長谷川さんに指示を直接出していた。

警察官が被害者と赴くと、知人男性(実際は本名)がいて、被告人になにやら指示をしている状況を見た。その後、被害者は指定場所で「お金です」と差し出すと、ちゅうちょせずに受け取ったことから、詐欺未遂の現行犯と認めて逮捕した。(【証拠】検察側の証拠「現行犯人逮捕手続き書」)
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