「学生の飲酒事故」大学側が責任を負わない理由 ポイントは「安全配慮義務違反」かどうか
大学生になれば、ゼミやサークルの飲み会に参加することもあるだろう。楽しい時間を過ごす学生がいる一方で、思いがけないトラブルに巻き込まれてしまう学生もいる。
都内の有名私立大学に通うショウヘイさん(大学3年)もその1人。参加したゼミの飲み会で、あるゼミ生が飲みすぎで倒れ、緊急搬送されたという。
「飲み会には教授も参加していたのですが、事件が起きる前に帰っていました。自分が深夜まで付き添いました」とショウヘイさんは話す。搬送されたゼミ生は一命を取りとめたという。
大学側は、ガイダンスなどで飲酒に関する注意喚起を行っている。それでも、飲酒にまつわる大学生のトラブルや事故は少なくない。飲み会で学生に何かあった場合、大学に責任はあるのだろうか。高島惇弁護士に聞いた。
ゼミの指導教官が責任取る可能性も
――法的に考えて、大学は学生の「安全配慮義務」に違反しているといえるのか
「大学の安全配慮義務違反については、残念ながら否定される可能性が高いです。
飲酒死亡事故において、大学の責任を追及した事案は過去に複数あります。しかし、大学生については、児童や生徒とは異なり、その能力や自主性を尊重すべきであるとともに、大学としても学生の共同生活や飲酒態度にまで介入する必要はないとして、下級審判例では大学の安全配慮義務違反をいずれも否定しています。
もっとも、一連の判例は、いずれも1980年代に出されたものです。そのため、飲酒における危険性、とりわけ急性アルコール中毒で死亡しているケースが定期的に報道されている現在においては、大学が負う安全配慮義務の範囲についても、より広範に設定する余地はあるかもしれません」