「学生の飲酒事故」大学側が責任を負わない理由 ポイントは「安全配慮義務違反」かどうか

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――ゼミの指導教授が、責任を問われることはあるのだろうか

「当時の飲酒態様や教授が把握していた状況次第では、飲酒を抑止せずまたは救護を怠ったとして安全配慮義務違反を肯定する余地はあります。

実際、福岡高裁平成18年11月14日判決は、漕艇部の部長(教授)の法的責任について、当時アルコールの早飲み競争などが行われていた状況を前提として、『そのような乱暴な 態様の飲酒を伴う場を提供した者としては、それによってもたらされる新入生らに生じることのあるべき危険性に十二分に思いをめぐらせ、およそ飲酒による事件事故が発生することのないよう万全の注意をもって臨まなければならないものというべきである』として、保護義務違反を認定しました(救護義務違反については否定)。

このような考えからすれば、ショウヘイさんのケースにおいても、仮に飲み会で過度なコールや早飲み競争がおこなわれているのを認識しながら、教授が注意せずに漫然と帰宅した場合には、学生を監督すべき立場だった点を捉えて安全配慮義務違反などを肯定すべきものと思料いたします」

「注意喚起」が求められる

――飲酒をめぐる事故を防ぐには、どのようにすればよいのか

「飲酒死亡事故については、被害者が自らの意思で飲酒している可能性もあるため、関係者の法的責任をどこまで認めるべきか非常に難しい議論を含んでいます。

その一方で、文部科学省は、各大学に対し、『学生の飲酒と事故の防止に係る啓発及び指導の徹底について』という通知を定期的に行っています。厚生労働省も『アルコール健康障害対策』という形で注意喚起をしています。

このような行政の動きや社会的関心からすれば、大学としてはもちろん、店舗や上級生など、より現場に近い人間が注意喚起することが、事故防止に向けた何よりの解決策であると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

高島 惇(たかしま・あつし)弁護士
退学処分、学校事故、いじめ、体罰など、学校内におけるトラブルを精力的に取り扱っており、『週刊ダイヤモンド』にて特集された「プロ推奨の辣腕弁護士たち」欄にて学校紛争問題が得意な弁護士として紹介されている。
事務所名:法律事務所アルシエン

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