知的障害者の私が「オレオレ」の受け子をした理由 利用した知人男性に「正直、まだ会いたい」
「軽度知的障害のある人が犯罪に巻き込まれる」。そのように聞いて思い浮かべるのは、加害者、それとも被害者としての障害者像だろうか。
オレオレ詐欺の「受け子」をつとめ、逮捕・起訴された女性(20)を2021年3月の初公判から取材した。彼女の知能指数(IQ)相当値からは、軽度知的障害に該当すると診断されている。
執行猶予付きの有罪判決を受けたあと、グループホームで生活しながら自立を目指す彼女について、相談支援事業所の責任者は「彼女には被害者の側面もあります」と話す。
女性は「オレオレ詐欺」という言葉だけは知っていたが、「オレ、オレは、男の人に関係する詐欺だと思っていたから、自分には関係ない」ことだと考えていたと語る。
事件から1年以上が経った今でも、女性は自分を「受け子」にした共犯男性への思いを完全には捨て切れていない。法廷で語られることのなかった本音を聞いた。(編集部・塚田賢慎)
受け渡しの現場で待ち構えていた警察に逮捕
長谷川あかねさん(仮名)は、地方で生まれ育った20歳の女性だ。東京にやってきて、特殊詐欺の「受け子」をつとめたために、逮捕・起訴され、昨年6月、懲役2年6月(求刑3年・執行猶予4年)の判決を言い渡された。
被害者の80代男性は電話口で異常に気づき、通報していた。長谷川さんは、受け渡しの現場で待ち構えていた警察に現行犯逮捕された。
判決を受けた日から、同じように障害などのある女性らとともに、都内のグループホームで生活している。更生支援計画書にのっとり、規則正しい生活を送ることで自立を目指す。ただし、許可のない外出や携帯電話の使用は禁止されており、家族とも好きに連絡できないため、ストレスも感じている。
ホームでの取材は、今年の1月中旬と2月上旬に行った。1月の取材日はたまたま事件からちょうど1年。長谷川さんは「もう1年。早いですね」と驚いていた。