知的障害者の私が「オレオレ」の受け子をした理由 利用した知人男性に「正直、まだ会いたい」

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裁判で弁護側は事実についてすべて認めており、長谷川さんも次回公判の被告人質問において、知人男性について「当初は信用していました。今は信用できないんだなと思ってます」と証言した。知人男性だけでなく、夜遊びで知り合った人たちとの関係を断ち、「更生」することの約束を口にした。

弁護人からは、地元のケースワーカーから聞いた内容をもとにしたアセスメント結果や、更生支援計画書などが証拠として提出された。

「弁1号証は更生支援計画書。社会福祉士作成。特性や障害、今後ののぞましい支援環境支援内容、支援目標が記されている。続いては……」。2号証の紹介に移ろうとする弁護士を制し、「それが重要だと思うので、中身を朗読してください」としたのが兒島光夫裁判官だった。

家族関係は難しいものだった。

父親は養育無関心、母親からはネグレクト

父親は養育に無関心で長谷川さんとは会話がない。子育ては母親任せとなるが、この母親やきょうだいらも知的障害を有するか、その疑いがあるという。母親は子に愛情を持つものの、育児生活能力の低さからネグレクトが疑われ、養育不十分と判断されていた。

長谷川さんは事件の1年前から親元を離れ、共犯の知人男性と同居を始めた。他者に依存する特性があり、善悪の判断ができないまま周囲に流される傾向があるという。

社会性の欠如と善悪の判断の困難の原因は家庭環境にもあり、両親や共犯者から距離をおくため、地元でないグループホームでの生活が望ましいとのアセスメント(支援方針を立てるための評価・査定)結果が示された。

量刑に当たって考慮された事情は以下のポイントだ。裁判官は、やさしい言葉を選ぶように、ゆっくりと話した。

・高齢の被害者が孫を思う気持ちを利用した悪質なもので組織性も認められるが、未遂で金銭的な被害は生じていない。
・犯行に不可欠な役割を果たしたが、強く言われて流され加担した面があり、軽度知的障害の影響もなかったとはいえない。
・犯情は芳しくないが、全体的なオレオレ詐欺のなかではマシな部類に属するといえる。
・前科なし。罪を認めている。社会復帰後の入居先など、更生の環境が整ってきていること。

続いて、もっとゆっくりと語りかけるように執行猶予の意味を説明した。

「執行猶予の意味を説明します。ただちに刑務所に入れないで、社会のなかで更生するチャンスを与えることです。

執行猶予の期間は4年間。犯罪を犯しちゃダメということです。4年の間に罪を犯すことになると、今回の2年4カ月くらい刑務所で服役してもらうし、新たに犯した罪の刑もあわせることになるので、長く刑務所に行ってもらうことになります。

4年間は罪を犯さず、無事過ごすということになる。わかりますか? 言ってる意味はわかったかな。くれぐれもその期間は真面目に生活してね。4年間が無事に経過しても、またやってしまうと。簡単に執行猶予は付かないから。4年の先も長く注意してね」

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