知的障害者の私が「オレオレ」の受け子をした理由 利用した知人男性に「正直、まだ会いたい」
長谷川さんは逮捕後から、日記のようなノートを書き続けていた。見せてもらうと、判決の日付のページには執行猶予の意味がメモされていた。
「4年間の間にまた罪を犯したら、2年4カ月〜2年6カ月刑務署(ママ)※4年間終わっても、悪い人について歩かない事、もしくは罪を犯さない事。」
判決言い渡しが終わり、法廷の外に出た弁護人は、執行猶予が付いたことに安堵し、深いため息をついた。ただ、検察が厳しい刑を求めたことも理解できると話す。「未遂だったが、おじいさんは大切な200万円を盗まれたかもしれない。被害者にとっては、加害者の障害のあるなしは関係ないし、許せないに決まっている」。
弁護士からもらった辞書とCDプレーヤー
この弁護士は国選での弁護を引き受け、社会福祉士と連携して長谷川さんを支えた。判決が出た後も気にかけている。
長谷川さんの部屋には、弁護士からもらった国語辞典と、ポータブルCDプレーヤーがある。勾留中に読んだ本の中で意味がわからない単語が出てきたら調べた。スマホのない生活も、プレーヤーで音楽を聴いてなんとか乗り越えられていると話す。
裁判で、長谷川さんは「悪いことをしている認識がないまま、なんとなく流されてしまった」と話していた。裁判で「なんとなく」とした部分を詳しく聞きたかった。
また、オレオレ詐欺に長谷川さんを巻き込んだ「キーマン」である知人男性との関係性や、受け渡しの状況における長谷川さん自身の認識を改めてインタビューで確かめたかった。
──電話で話したり、お金を受け取ったりすることについて、悪いことだと思っていましたか。
なんとなくヤバいとは思ってたけど、「ノッチ」(長谷川さんは知人男性をあだ名で呼ぶ。便宜上、仮のあだ名を用意した)に脅されてるし、逃げたら何されるかわからなくて怖かった。怒られると、ノッチから蹴られたことを思い出して頭が真っ白になる。
──オレオレ詐欺をしている認識はありましたか。
オレオレ詐欺は聞いたことがあったけど、俺という言葉をいうもので、男の人だけが何かするイメージでした。警察の人から渡された紙に「詐欺」と書いていたので、詐欺なんだとわかりました。