クラシック鑑賞「最前列がいい」と限らない深い訳 2階席や3階席のほうが実はお得なケースも
また、すべてのホールに設置されているわけではありませんが、ステージの上方に設けられる合唱席と呼ばれる席も、興味深い席です。
その名のとおり、たとえばベートーヴェンの「第九」のような合唱つきの演奏会の場合に合唱団が陣取る場所で、オーケストラ後方に位置します。しかし、合唱つきの曲はそう多くありませんから、この席が一般の観客向けに開放される場合があります。
この席の利点は、音響が必ずしもよくない席なのでチケット代が安いこと、そして、演奏者たちと同じ視点で指揮者の動きを観ることができることです。私はお金のなかった留学生時代、よくこの席に陣取って、カリスマ指揮者やソリストの様子をオーケストラの一員になったつもりで観ていました。もし機会があれば、ぜひ体験してみてください。
そして、音は上へ上へと伝わるものですから、2階席や3階席のほうが1階席よりも音響が優れているホールが多いように思われます。こうした席は通常、1階席よりチケット代が安かったりもするので、実はお得で、よい選び方かもしれません。
ということで、演奏者を間近で見たいときは前方席、心ゆくまで音を楽しみたいときは後方から上階席といったふうに、目的別に席を選ぶことができれば、もう上級者に一歩足を踏み入れているといえるでしょう。
日本は世界的に見ても音楽専用ホールが多い
演目ではなく、行きたいホールで演奏会を選ぶ――そんなことが、この日本では可能かもしれません。実は、日本は世界的にみても、クラシック音楽専用のホールがたくさんある国なのです。
1980年代、好調な経済状況を受け、音楽ホールが次々と建設されました。それ以前は県民会館や市民会館のような多目的ホールを使用していました。そのため、どうしてもクラシック音楽を聴くには響きが足りなかったのですが、国や自治体、企業が首都圏をはじめ全国各地の都市にコンサート専用のホールを建てたことで、クラシック音楽を聴く環境がかなり充実したのです。
その中から、私の印象に残っているホールをいくつかご紹介します。
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