名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 河本敏浩著 ~絶望的な学力格差解消のために「義務教育修了資格」制度を導入せよ

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名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 河本敏浩著 ~絶望的な学力格差解消のために「義務教育修了資格」制度を導入せよ

日本の教育、人事に関わる人間を悩ませている「学力低下」。その原因は「ゆとり教育」というのが常識になっている。本書はそうした安直な図式を否定する。もっともっと問題は根深いのだ。

本書には、かなりの数の学力テストや入試問題が掲載されている。冒頭で紹介されているのは、高校生2万6000人を対象に2009年度に実施された問題だ。英語は中学初級レベル、現代文レベルは小学校から中学初級レベル、数学は中学初級レベルだが、いずれも正答率は低く、平均点は英語36.31、現代文41.80、数学に至っては16.97と壊滅的だ。

今は、こんな学力でも大学生になれる。大学進学率は上がり続け、2009年春は50.2%と5割を超え、10年春には54.3%に急増した。もっとも基礎学力を欠いたまま大学生になる者は、世界的に見て珍しい存在ではない。ただし諸外国では、大学に進学しても必ずしも卒業できるわけではない。

OECD加盟国の大学中退率データ(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3928a.html)によれば、イタリアや米国の中退率は5割を超えている。つまり両国でも進学者の学力は荒廃しているが、日本と違って半数以上が卒業できないのだ。

ところが、日本における中退率はわずか10%で、OECD加盟国中で最低。著者の結論は明快だ。「現代の日本は、まったく勉強しないまま大学への入学を許可し、かつ基礎学力を欠いたまま(それゆえ、おそらくは教育効果のないまま)卒業することを許す、世界史上でもきわめて稀有な環境を用意していることになる」。

本書は様々なテーマについて検証し、われわれの常識を壊してくれる。「学力」に関して多くの人は「自分たちはゆとり世代と違う」と自信を持っている。昔になればなるほど正しい教育カリキュラムで育ち、受験をかいくぐってきたと思っている。また学力に絶対的な基準があるかのように思いこんでいる。だが、これは間違いだ。

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