名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 河本敏浩著 ~絶望的な学力格差解消のために「義務教育修了資格」制度を導入せよ
大学入試は絶対的学力ではなく、点数という序列で決まる。したがって、その難度は時代によって変動している。その要因は人口と進学率にある。本書では東大の英語の問題を1970年と08年で比較しているが、問題のレベルは70年が圧倒的に低い。合格点数はほぼ同じだから、08年に東大に合格した者の方が圧倒的に質は高い。
本書は「人口動態と進学率の変化を見ていけば、大学入試の難度は、68年~69年において一時的に急上昇し、それが一九七〇年代前半で下落した」。この下落した時期に大学進学した人は現在50代半ば。トップマネジメント層だ。
「丙午世代(66年生まれ)」は数が極端に少ない(18歳人口が156万人)。この世代は大学入試(85年)が楽だった。また卒業時もバブル採用のまっただ中。1歳年下の67年生まれも浪人生が少なかったから、入試は楽だった。
この世代は現在43歳か44歳。マネジメント層の中核を担っている。そして「ゆとり教育はけしからん」という人が多いだろうが、実は自分たちは競争の少ない恵まれた世代なのである。
ちなみに本書によれば、もっとも入試難度が高かったのは92年前後。団塊ジュニア世代で人口が爆発的に増えたにもかかわらず、上位大学の定員が増えなかったので過酷な競争下に置かれた。つまり学力が高い。現在、30代半ば前後の人たちだ。
現在起こっているのは、全体的な学力低下ではない。上位クラスは昔よりはるかに難しい問題を解く能力を持っている。ところが同じ「大学生」なのに小学生レベルの読み書き計算ができない若者もいる。絶望的な「学力格差」だ。