このコラムは政治分析ではないから、解散が安倍政権にとって損得があるのか、どういう背後関係で解散することに追い込まれたのか、ということは議論しない。単に、解散により、安倍政権とアベノミクスバブルが最後の膨張を目指し、それに成功しても失敗してもバブル崩壊を早めるだけであることを指摘するにとどめる。
選挙に圧勝すれば、解散に追い込んだ側は、自滅するか、分裂、離脱するしかない。一方、負ければ、当然、これまでの人気上昇は支持率の急落となって返ってくる。そしてバブルは普通に崩壊する。
しかし、社会の群集心理の分析として興味深いのは、ここに、GDP成長率が予想外に2期連続マイナスとなった瞬間に解散することとなったことだ。これは事態をどのように変えるのか。
当初は、「増税延期の是非を問う選挙」という打ち出し方だった。多くの国民は消費税8%の引き上げにある程度の痛みを感じているから、それに反対する理由はない。だから、選挙に負ける可能性はなかった。
「景気後退」で、増税延期が「ふつうの出来事」に
増税延期は無責任だとか、財政が、というのは、他人事としてはそうだが、自分の家計やレジの前で消費税を上乗せされたときの意外な最終支払額の膨らみように毎日直面していれば、増税の延期は無責任だとして絶対反対するのは難しい。
つまり、中途半端な八方美人の民主党政権と違って、徹底したポピュリズムにより勝利を収め続けてきた安倍政権戦術としては、今回も負けのない戦いを仕掛けてきた、あるいは、そのつもりだったのだ。予想通り、民主党はこれに反対できず、争点のない選挙になり、解散をわざわざする大義がない、政局遊びだといういかにも野党的な負け犬の理論で反論するしかないところに追い込まれていた。
しかし、GDP成長率がいまいちなのではなく、マイナスとなれば、景気循環の定義的には景気後退となり、景気動向により増税時期の判断を変えるという考え方ならば(個人的には、消費税増税の時期を景気判断と連動すべきでないと考えているが)、ここで増税を延期するという判断は当然あり得る。だから、増税延期自体は「ふつうの出来事」となったのだ。
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