過熱する葬儀ビジネス、商機到来、絶えぬ参入

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JR平塚駅(神奈川県)から車で走ること10分足らずで豪華な低層邸宅が目の前に現れてきた。ジャスダック市場に上場する冠婚葬祭業大手の平安レイサービスが手掛ける葬儀場「湘和礼殯館真土」だ。

館内に入ると、会葬者が集うロビー、祭壇が置かれた葬祭式場、通夜振る舞い・精進落とし用の会食室、親族控室がある。親族控室には台所、洗面所、お風呂があり、宿泊用のベッドに冷蔵庫やテレビといった日常の生活環境に近い設備が整っている。ほかにも自動ドアは使わない、玄関に鍵付きの傘立ては置かないなど、“自宅感”を盛り上げる工夫を凝らしている。

丸ごと1軒貸し切り ゲストハウス型も

「ゆっくり故人に寄り添うことができました」。同礼殯館を利用した人はこう話す。「以前、別の親族が亡くなったとき会葬者300人ほどの葬儀を行ったが、接待に追われ、悲しむ間も、お別れを言う間もなく葬儀が終わってしまった」。

それが礼殯館では通夜から告別式(本葬)までの二日間、丸ごと1軒の貸し切り利用ができる。故人のひつぎを前に、親族だけでしんみりと明け方まで昔話に花を咲かせることができたという。秋元仙子館長は「残された家族の思いがどこにあるのかを受け止め、可能な限り要望を実現するのが自分たちの務め」と話す。

こうした「ゲストハウス・フューネラル」という葬儀の新形態が今、脚光を浴びている。福岡市では地場の葬祭業者・彩苑がゲストハウスを4軒、松江市では葬祭会館・光心が2棟を展開中。また、群馬県ではライフシステムが経営する日典ラサが「想殯館」というゲストハウスを2軒持ち、今後2~3年内に3~4軒を建設予定だ。

首都圏でも葬祭業界大手のニチリョクが東京・練馬区と横浜市西区に100坪、3階建ての邸宅型葬儀場を建設するなど、そこかしこに建てられている。草分けである平安レイの相馬秀行社長は「親族の葬儀などで一度使った人が、礼殯館でやりたいと、年々リピーターが増えている」と驚きを隠さない。


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