日本「ウクライナ難民受け入れ」偽善に聞こえる訳 アフガン難民が置かれた状況を見ればわかる

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そのうえ、EU諸国は日本とは比較にならないほどの好条件でウクライナ難民を受け入れようとしている。一橋大学の橋本直子准教授によると、「EUは避難民に受け入れ国の国民とほぼ同等の社会的経済的権利付きで当初1年の在留資格を保証しており、情勢次第では延長も可能だ」。

570人しか受け入れていない

しかし、難民専門家らが声明を「たんなるパフォーマンス」と言った背景には、アフガニスタンの人々が置かれたひどい状況がある。昨年8月末にアフガニスタンがタリバン政権の手に落ちて以来、外国とつながりをもつ元アフガニスタン政府職員は明らかに新政権による報復の対象となっている。

これには、過去40年間に日本で学んだ約1400人のアフガニスタン人と、日本の外交団、JICA(国際協力機構)、さまざまなNGOで働いていた数千人の職員(警備員、通訳・翻訳者、運転手など)が含まれる。

したがって日本は、直接の関係のないウクライナ人と同じくらい、あるいはずっと寛大に、日本と関係を有し、そのために危険にさらされているアフガニスタン人を歓迎すべきである。しかし関係者によると、日本はこのようなアフガニスタン人の元職員のうちほんの一部を非人道的とは言わないまでも過酷な条件下に受け入れたに過ぎず、これまでのところ570人しか受け入れていない。

タリバン復権時、民間NPOの元職員より、日本大使館やJICA職員のほうが優先的に日本に受け入れられたが、受け入れられたのは日本に関係があったり、そのために危険を感じている人たちのごく一部だ。

「日本大使館に10年間勤務したが労働契約が4月で切れたアフガニスタン人は受け入れられなかった」と、ある専門家は嘆息する。「タリバン復帰の3年前に退職した大使館警備員も受け入れられなかった」とあるNGO代表も話す。

日本に受け入れられたアフガニスタン人たちは、JICAが運営する施設に収容された。情報筋によると、彼らの大半は代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターの中にある建物に入居。「日本政府は彼らに手当や住居、食料のほか、日本語の授業も提供した」と、事情に詳しいある関係者はいう。

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