商品もチームも「一言」で言い表せればうまくいく 名物クリエイティブディレクターの最強仕事術
コンセプトワードがあることで、チームが共通認識を持つようになり、その先のクリエイティブ作業に無駄が生じにくくなり、加速します。チーム全体がブレずに目指すことができる「北極星」のようなものとも言えます。
理想はチームでコンセプトワードを共有したうえで、クライアントともそれについて合意しておくことです。プロジェクトの向かうべき方向を明確にし、共有し、双方が納得できていれば、「表現のクリエイティブ」によるクリエイティブジャンプ(=最終的な表現)の段階で齟齬が起きにくくなりますし、ワンチームでよりよいゴールに向けて進むことができるようになります。
タクシーアプリGOの場合
タクシー配車アプリ「GO」のプロジェクトでも、具体的な解決策を考える前に、何を訴求するのか、コンセプトワードをつくるところから始めました。
配車アプリを使っている人は、その当時全国で2%程度しかいませんでした。そもそもタクシーを使わない人もいて、彼らはおそらく価格が安くならないと見向きもしない。それに競合の配車アプリもある。こうした状況を踏まえてこのプロジェクトでは、誰に向けて、どんなことをメッセージしていくのかを、あらためて最初に整理しておく必要がありました。
たとえば、「提携タクシー台数ナンバーワン」とか「配車時間が速い」というのは「GO」の強みの1つです。でも、はたしてこれだけで消費者に伝わるのか、響くのか。対競合という意味では差別化につながるかもしれませんが、それを伝えただけで消費者が進んで配車アプリを使ってくれることは考えにくい。
となると、配車アプリの根本的な利便性や存在意義をもっと訴求しなければならないのではないか。たとえ迎車料金がかかったとしても、道路を走るタクシーを探すのではなく、タクシー乗り場に行くのでもなく、電話でタクシーを呼ぶのでもなく、配車アプリを使うシーンとはどんなシーンなのか。つまりは「ユーザーのインサイトがどこにあるのか」ということです。ここをあぶり出せれば、ユーザーが「GO」を使う理由を具体的にイメージすることができます。
「荷物が多い」「絶対に遅れられない」「近くで拾えない」「天気が悪い」「疲れている」「酒に酔っている」「具合が悪い」……。こうしたシーンをイメージしていくと、ある戦略的なコンセプトワードが思い浮かんできました。道に出て探すのではなく、タクシー乗り場に行くのでもなく、電話で呼ぶのでもなく、配車アプリを使う理由。要するに「困っている」シチュエーションだということです。
そこで生まれたのが、このコンセプトワードでした。
「困ったらGO!」
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