商品もチームも「一言」で言い表せればうまくいく 名物クリエイティブディレクターの最強仕事術
逆に言うと、タグラインをつけないうちに「表現のクリエイティブ」に着手することは避けなければなりません。いまいちピンとこない、魅力が伝わらないタグラインしかつけられていないときも同様です。それはまだ、「この製品は誰に刺さるのか」「このサービスの本当の魅力がどこにあるのか」が見えていない証だからです。
タグラインがきちっとはまれば、最終的にそこから「表現のクリエイティブ」の力でターゲットの気持ちを打ち抜くような広告のキャッチコピーが生み出されます。たとえば「夢の通訳機」(タグライン)である「ポケトーク」からは「世界とポケトークしよう!」、「360度WEBカメラ」(タグライン)である「Meeting OWL」からは、「リモート会議の必需品」というキャッチコピーが生まれました。
すでにタグラインが決まっていることもありますが、多くのケースで、私は課題の解決策を考える際に、クリエイティブチームと一緒に、「これってそもそもどんなときにあったらいちばんうれしいんだろうね?」「誰がいちばん助かるんだろうね?」と、改めて自分たちなりにタグラインを考えることから企画をスタートさせます。その製品やサービスで何がしたいのか。社会やターゲットにどんな便益をもたらし、ハッピーにすることができるのか。
「そもそも何なのか」というベーシックなところにつねに立ち戻る、ということは極めて大事だと思っているからです。
なお、余談ですが、時には「タグライン」と「製品名」が同じになることもあります。私が手がけたわけではありませんが、「食べるラー油」などというのは、タグラインがそのままネーミングになっています。製品名を見ただけで、それが何なのかが全部わかる、素晴らしい商品名でありタグラインだと思います。
コンセプトワードをつくる
「一言で表す」のは、商品やサービスにだけ必要なことではありません。チームにも必要です。チームを組成したら次にすることは、プロジェクトの方向性を定めるスローガンとも言える「コンセプトワード」をつくることです。「戦略ワード」と言ってもいいかもしれません。場合によっては、チームを組成する前に、先にコンセプトワードをつくることもあります。
コンセプトワードとは何か。そのプロジェクトが戦略的にどの方向を目指すのか、企画を進めるにあたってどこを掘り下げていけばいいのか、その言葉を聞くだけで、ターゲットや課題、課題解決のためのゴールのイメージがつく言葉です。タグラインが「製品のことを一言で表す」ワードなら、コンセプトワードは「プロジェクトのことを一言で表す」ワードです。
これがしっかりできていないと、最終的なアウトプットがターゲットに刺さるものにならなかったり、「ちょっと違うな」となってしまう可能性が高いのです。
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