「パイプの騎士」の称号を持つ男が語る「粋と野暮」 権力者は変わっても文化は連綿と続いてきた
どんなことでもいい、若い人たちにも、日本の長い歴史の中で築き上げた文化に自分の居場所を見つけて、自分なりに愉しんでもらえるといいと思いますよ。
遊びの矜持は持っていたほうが面白い
――柘さんは、趣味にもファッションにもこだわりを持ってらっしゃいますよね。
柘:ファッションでなくて「なり」と言ってもらいたいね。趣味のコレクションはいろいろあります。そしたら今日は少し色気のある物をお見せしましょうか。こういう物は花街に遊びに行くときなんかにちょっと忍ばせて行ったりすると面白いんですよ。
僕らが夜の街に出るとしたら、大概は銀座じゃなくて浅草や向島の花街が多い。銀座できれいなお姉さんたちと話しているのも楽しいんだけど、浅草は芸が見れるのでね。踊りを鑑賞したり、謡ったり、都々逸の色っぽいのもやってくれるしね。
銀座のお姉さんは例えばバレンタインのときにはチョコレートと一緒に手紙をくれるんだけど、花街の姐さんからは、手紙じゃなくて巻物でくる。その最後に一句五七五で認(したた)めてある場合は、返信に七七音をつけ足してやるとかね。川柳だったらこちらも川柳で返すなんてね。そういうのが面白いんだ。
――遊ぶにも相当な知識が必要な気がしますね。
柘:遊びは文学性のあるしゃれっ気を持ってたほうが面白いよね。教養って言っても大上段に構えない教養ね(笑)。しゃれや冗談でも、お互いに伝わらないとつまらないから。
着物を着るとき、僕はよく襦袢で遊ぶんだ。(背中に春画が描かれている)襦袢は下着だから普通にしていれば見えないんだけど、飲んでる途中で暑くなってくると、片袖を脱ぐわけ。そうすると、チラッと見えた柄を見つけたお姐さんから「あらツーさん、おイタなもの着ちゃって」なんて言われてさ(笑)(花街では本名はあまり呼ばない)。四十八手が描いてある襦袢は、袂からちょっとだけ見え隠れするんですよ。これも面白いよね。