「パイプの騎士」の称号を持つ男が語る「粋と野暮」 権力者は変わっても文化は連綿と続いてきた

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――芸者さんは、お客さんのちょっとした笑いの仕込みに気づいてくれるわけですね。

:そうそう。でもまあこんなことするの、今じゃあんまりいないよね(笑)。座敷の一興ですよ。でもこれも「どうだ」って見せるように着たら野暮ですね。わかってくれなければそれはそれでいいんだよ。黙って帰りゃいいんだからさ。

――自慢したり、わかってもらえないと拗ねたりするのはあまりカッコいいことじゃないですね。

:そう、でもそこに気づいてもらえると、俺だって内心うれしいんだ。20万円くらいかけて作ったんだからさ(笑)。ん〜、このへんが俺の野暮よりのところかな(笑)。

――ハハハ。やっぱり言われたかったんですね。こういう「オイタ」な物を身につけるのは、夜遊びのときだけですか。

:例えば、結婚式のようなめでたい席には、縁起物の小物を身に着けます。この「根付け」は“打ち出の小づち”で、金銀財宝がザクザク降ってくるように願いを込めている、というのは表向き。これにはちょっと細工があって、中は男根と女性器になってる。裏の気持ちは子孫繁栄を願って――ということにある。でもそれは人に見せないで、家に帰ってきてニヤッとして仕舞うというわけで(笑)。

見せたら野暮

――誰にも見せないわけですね。

:そりゃ見せたら野暮じゃない(笑)? ほかにも表向きは玉手箱で、開けると中は……っていうのもある。こういうのはキリがなくたくさんあるんですよ。しゃれだね。小さいものの細工は、自分も物作りをしてるからわかるけど、大変なんですよ。道具だってこれに合わせて小さくしないとできない。職人の技が詰まっているんだ。

――根付けの面白さは細工にもあるんですね。

:根付けは六方正面といって、どの面から見ても完成されてなきゃいけないんです。置物彫刻だったら置いて見るじゃない。だから底面は表現されていない。でも根付けっていうのはフォーカルポイント(注視点)が20〜30cmのところにあるから、全六面、どこから見ても形が整ってなきゃなんない。

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