「結婚減」は飲み会が減ったせい!?意外すぎる関係 単身男性の外での飲酒が減るほど初婚数も減る

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男性だけではありません。少し古いですが、2008年、第45回宣伝会議賞の準グランプリに選ばれた沖縄の泡盛メーカー忠孝酒造さんの広告キャッチコピー「もう少し 飲んだら、好きって ばれそう」というものもあります。男女にとって、酒は恋愛の一助になるものです。

しかし、こう書くと、「相関と因果は違う。これは単なる擬似相関であって、酒を飲まなくなったから結婚が減ったとはとても言えない」というご指摘がきます。確かにそうです。有名な擬似相関の例として「ニコラス・ケイジの映画が増えるとプールで溺死する人も増える」というのがあります。

たまたまふたつの推移が相関するからといって、そこに因果はなく、たとえニコラス・ケイジが映画俳優として失業したとしてもプールでの溺死者がゼロにはなりません。しかし、それを言ったら「コロナのせいで結婚が減った」も同様です。

結婚した夫婦の飲酒状況

それでも「酒を飲まない下戸は結婚できないとでも言うのか」と反論する人もいるかもしれません。当然そんなことは一言も言っていないのですが、実際結婚した夫婦の飲酒状況をご覧いただくと興味深い結果となります。2018年に私は、夫婦約1万組に対して、それぞれが飲酒するか否かでの組み合わせを調べたことがあります。

それによれば、「双方とも飲酒する夫婦」は全体の5割近くあり、「夫が飲酒する夫婦」もあわせれば、夫婦の7割は「夫が酒飲み」の夫婦ということになります。「双方とも下戸」夫婦は2割程度にすぎません。

これを見る限り、結婚は酒によって作られるというのもあながち間違いではないと考えられます。「酒のないところに愛はない(エウリピデス)」という言葉もありますが、むしろ「愛だと錯覚するためには酒が必要」なのかもしれません。

すべての結果の原因はひとつではなく、さまざまな複合要素が絡み合って起きているということは大前提となりますが、こういう視点で考えると、コロナウイルスの出現が婚姻数を減らしたのではなく、この2年間で政府がやってきた「飲食店に対する時短要請」「酒の提供禁止」という措置が、副作用として日本の婚姻数の減少を後押ししてしまったのではないかともいえます。正確には、婚姻数の減少につながる若者の恋愛機会の喪失です。

若者の恋愛機会の喪失は、婚姻数の減少につながります。婚姻数の減少は自動的に出生数の減少となります。この影響は4~5年後に婚姻数および出生数として明らかになるでしょう。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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