4月から「18歳成人」で変わるもの・変わらないもの 18歳、19歳は喪失する「未成年者取消権」の中身

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多くの自治体は成人式の対象を従来と同じ年齢とする方針(写真:きさらぎなおや / PIXTA)

来る4月1日。わが国における成人年齢は1876(明治9)年以来20歳とされてきたが、民法が改正され、同日の施行により18歳、19歳である若者も一斉に成人となる。しかし、その当事者に自覚はあるのだろうか。また若者を見守る大人たちは十分準備をしてきただろうか。

なぜ、このような民法改正が行われたのか。法務省は、「近年、憲法改正国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳、19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきました。こうした政策を踏まえ、市民生活に関する基本法である民法においても、18歳以上の人を大人として取り扱うのが適当ではないかという議論がされるようになりました。世界的にも、成年年齢を18歳とするのが主流です。成年年齢を18歳に引き下げることは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると考えられます。」と説明している(同省HP「 民法(成年年齢関係)改正 Q&A」より)。

18歳、19歳は喪失する「未成年者取消権」

18歳と言えば、多くの者が高校3年生だ。高校の同じ教室で成人と未成年者が交じることになる。では、18歳を成人年齢とすることにどのような意味が実際にあるのだろうか。18歳から親の同意なく、売買、借金あるいは投資などの契約や、結婚ができるようになる。しかし、特に消費者問題を扱う専門家等からは引き下げに反対の声が上がっていた。筆者も反対してきた一人だ。それは、「未成年者取消権」という未成年者に与えられている権利を、18歳、19歳の若者は喪失するからだ。

民法には、「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」(5 条 1 項)との規定がある。それは契約の場面で重要な意味を持っている。

コンビニでお弁当を買ったり、食堂でごはんを食べたりすることも契約だ。通常はそうした契約で困ったり被害を受けたりということはないだろう。しかし、現代社会では高額な商品やサービスも多く、また契約内容が理解できないものであったり、場合によっては悪質な勧誘や不当な契約内容のものもある。

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