4月から「18歳成人」で変わるもの・変わらないもの 18歳、19歳は喪失する「未成年者取消権」の中身

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未成年者はまだ経験も浅く、知識も十分でないという弱さを抱えている。それゆえに民法は制限行為能力者として、契約などの法律行為の取消権を定めている。法定代理人(未成年者の親権者。通常は父母)が同意していない契約は取り消すことができるのだ。

つまり、弱さを抱えた未成年者が不本意な契約をしてしまった場合、その契約からの解放を可能にする手段として機能しているのだ。すなわち、成人年齢の20歳から18歳への引き下げは、18歳、19歳という若者の重要な保護制度が消失するということで、引き下げ反対運動が起きていた。しかし、そうした意見が押し切られたという思いを消費者問題の専門家の多くが持っている。

もちろん、未成年者であっても、人として、成人と同様の基本的人権を有しており、その自己決定権は十分に尊重されるべきであるのは当然のことだ。特に、中学や高校の卒業後に働いている子どもたちにとっては、成人と同様の社会生活を営み、納税の義務を果たしていながら、未成年者として扱われる結果、生活するうえで必要な契約行為にも親権者の同意が必要となっており、その自己決定権が制約されているという見解は否定できないだろう。

18歳から成人となることへの不安の声も

民法改正が決まった後、筆者は大学の授業でその経緯と効果を説明したうえで、18歳、19歳の学生に成人年齢の引き下げをどう思うか聞いた。8割以上の学生が成人年齢は20歳がよい、18歳から成人となるのは不安と答えた。18歳への成人年齢引き下げを主張する立場からは、それこそが甘えということになるのだろうが、当事者にその自覚がない中での引き下げは大きな問題を孕んでいる。18歳、19歳の若者の消費者被害の懸念だ。

全国の消費生活センター等に寄せられる消費生活相談(国民生活センター集計)について、年齢ごとの平均件数でみると、未成年(18・19歳)の相談件数(平均値)に比べ、成人になりたての若者(20~24歳)の相談件数(平均値)が約1.5倍に大幅に増えている。

成人になりたての若者は、契約に関する知識や経験が乏しいこともあり、内容をよく理解しないまま、安易に契約を結んでしまう傾向にある。未成年者の場合、親権者の同意なく結んだ契約は、原則、取り消すことができるが、成人になるとそうした保護はないので、社会経験に乏しく、保護のない成人を狙い打ちにする悪質な業者もいる。こうしたことが、成人になりたての若者の消費生活相談の背景にあるとみられる。

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